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第10話 対抗戦当日4. 魔力トレース


> 〈AIシオリの語り:開幕〉

>

> ねぇ、知ってた?

> 迷路って、作るより、解く方が10倍むずかしいんだって。

>

> でもさ――この世界で一番厄介な“迷宮”って、たぶん、自分の頭の中なんじゃない?

>

> 感覚のズレ。思い込み。情報の洪水。

> そういうのが積もって積もって、「真実」なんて、すぐに埋もれちゃう。

>

> ……って、ちょっと真面目モードに入ったところで! 今日の種目はこちらッ☆

> 『魔力トレース 〜知覚の迷宮〜』!!

>

> 見える道が正解とは限らない、感覚も常識も信用できない、超・錯覚フィールド。

> 君は“自分の感覚”を信じ切れるか!?

>

> さあ、観察・推理・罠の応酬バトル、いってみよーっ!


---


試合開始の合図とともに、フィールド全体が地鳴りのように震えた。

魔力の波が押し寄せ、風景がぐにゃりと歪んでいく。


ズークは観客席奥の制御陣から、迷宮の空間構造を確認していた。


「空間屈折、視覚干渉、感覚リンク……うん、よし。すべて狙い通り」


この迷宮は、ただの立体構造じゃない。

視覚と実体のズレ、上下の反転、音や温度の遅延、果ては“重力感覚の逆転”まで。


つまり、“見えてる道”が正しいとは限らない。むしろ、そうじゃないように設計されている。


(……子供にやらせる仕掛けじゃねえな。……いや、だからこそ、あいつらなら)


ズークの脳裏に、去年の小さかった姿が一瞬だけよぎる。


そんななか、最初に動いたのは――やはり、ユウナだった。


「エリアα、斜角に干渉あり。構造再配置……起点は、ここ」


静かに告げる彼女の瞳に、淡い光が宿る。

“疑似未来視”――複数の未来パターンを瞬時に演算し、空間の変化を先読みする技術だ。


言い換えれば、「この道を進んだ場合の結果」を、何通りも同時に計算しているようなもの。


「……全体構造の把握率、34パーセント」


その隣では、サラが指先から《マナ・フィラメント》を伸ばし、ユウナの魔力流を安定させていた。


「焦らずいこう。魔力の揺れ、いま安定してる」

「ありがとう。あと少しで全体像が見える」


解析と補助――ラボ・エクリプスの連携は、理詰めの美しさがあった。


だが、その先に立ち塞がるのが、ナナとミレイナの“感覚干渉合戦”だった。


「……なんか、変だよ。ここから先」


ナナが立ち止まり、迷宮の壁に手をあてる。

そのまま、静かに目を閉じた。


空気に淡い揺らぎが生まれ――

《ドリーム・リンク》。他者の知覚に干渉し、現実と幻の境界を曖昧にする魔法。


「……ミレイナ、いるでしょ」


すると、通路の先からひょっこりと、明るい声。


「バレちゃった? でも〜〜、そっちじゃなくて〜〜……こっちですッ!」


パッと、右の壁からミレイナが飛び出した――かと思えば、

次の瞬間、別の通路へとスルリと吸い込まれていく。


「“見えてた”のも演技だよっ♪」


《ミミックフォーム》。空間そのものに溶け込み、擬態するミレイナの得意技だ。

まるで迷宮そのものが“動いている”ように錯覚するその演出に、観客席がざわついた。


だが、その幻影を正確に撃ち抜いたのが、フォートレス・ドライブのカイルだった。


「……目障りだ」


低くつぶやき、すっと指を鳴らす。


次の瞬間、放たれた《ロックオン・フレーム》が、ミレイナの幻影を一閃した。


「わっ、当たった!?」

「それ、ホログラム扱い。実体はない」


カイルは冷静そのものだった。

ズークは唸る。


(魔力の分布、空間の揺らぎ、全部読んでる……この子、精密すぎる)


だが、その裏で最短ルートを突き進んでいたのが――タクミだった。


「ふふん。時間は、延ばすより巻いたほうが速いよね〜〜」


彼の足元から広がる魔力の歪み。

《クロック・ブレイク》。時間の局所加速によって、他者より一歩も二歩も速く移動する。


時間の流れが彼の周囲だけ、早回しになっているようだった。


「先にひとつ、確保〜〜♪」


いたずらっ子のような笑顔で、タクミが手を挙げた。


(……ズルいけど、合理的。うん、反則じゃない)


ズークが半ばあきれつつ、結界の安定調整を行う。


そして、終盤。誰もが予想しなかった奇襲が起こった。


――ジンが、突如として迷宮中央部に現れ、《ピンホール・ジャンプ》で魔力源を一つ強奪したのだ。


「!? 転移座標、読んでたの!?」


驚くユウナ。だが、すぐに気づく。


「違う……これは陽動。エリス、今っ!」


その声と同時に――


「ふふん♪ お先っ」


迷宮の最奥部。完全に死角だった位置から、エリスが魔力源をさらりと奪取する。


「……ってことで、地味に計算してたの、私なんだよね〜〜♪」


華麗な締めくくりだった。


結果、魔力源の獲得数は――

フォートレス・ドライブが7個。ラボ・エクリプスが8個。


終了の鐘が鳴ると、迷宮はシュウッと霧のように消えていった。


ズークは静かに頷いた。


(ギリギリだった。でも、ちゃんと“連携”してたな)


ユウナの未来視と判断、サラの補助。

ミレイナとナナの知覚干渉の読み合い。

タクミの時間加速。ジンの奇襲。

そして、誰もが見落としていた“本命”――エリス。


「フォートレス・ドライブ、七個。ラボ・エクリプス、八個」

「勝者、ラボ・エクリプス!」


拍手と歓声が、広場に広がっていく。


---


> 〈AIシオリの語り:ラスト〉

>

> ふふっ、やるじゃん、天才チーム。

>

> でもね、あたし、ちゃんと見てたから。

> この勝負の裏で、全員がちょっとずつ“自分の限界”と向き合ってたってこと。

>

> それが何よりの成長の証なの。

> 仲間であり、ライバルでもあるって、そういうことだからさ。

>

> さて、次はいよいよ――最後の対抗戦。

>

> 勝ち負けより、もっと大事な“なにか”が待ってるよ。

>

> ……準備、できてる?

>

> 次回――《戦略魔法ドッジボール》!!

> “爆発的”に盛り上がるから、お楽しみにっ☆


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