第10話 対抗戦当日3. フラッグ争奪戦
> ――あら、思い出って、きらきらしてるだけじゃないのよ。
> 時には、悔しさとか、焦りとか、怒りとか。
> そんな色が混ざってるから、忘れられないのね。
> はいはいそこ、甘酸っぱいとか言わないの。そういうのは次回までおあずけ!
>
> でもね、それでも――この瞬間を共にしたってことが、大事なんじゃないかしら。
> 連携、友情、そして競争。さあ、勝つのはどっちのチーム?
>
> 「フラッグ争奪戦」開始――カウント、ゼロ!
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「うおおおおおおおっ!!」
号砲のような叫びとともに、炎の塊がフィールドを駆けた。
リクだ。地を蹴った瞬間、彼の全身から熱気の奔流が立ちのぼる。
「《ブレイク・チャージ》発動、前進加速っ!」
ドォンッ!!
小さな爆発のような衝撃音。彼の体が火花を引いて跳ねる。
地面の砂が舞い、フィールド中央に張られた結界が波のように揺れた。
(第一撃から全力かよ……)
ズークは唇を引き結びながら、空中から視線を注ぐ。
リクの役目は、前衛突破。
彼の魔法は、熱と衝撃をためて一気に放つ、高出力型。
その突進が、相手チームの守る「氷と火」の結界に叩きつけられた。
「……来たわね」
ふわりとローブを翻して現れたのは、ラボ・エクリプスのリーダー・エリス。
両手をくるくると回しながら、結界へ魔力を注ぎ込む。
「なら、こっちは《融合火氷結界》でお返しよ!」
ヒュゥンッ!
真紅と蒼白の魔力が絡み合い、結界の表面が螺旋状にうねる。
温度差による膨張収縮を応用した、干渉分散型の複合式防御。
リクの突撃は、その表層で熱風と火花に変換され、霧散した。
「ぐっ……止まんねえけど、手応えがねえ……!」
「そりゃそうよ。理論で張ったんだから」
エリスが片頬をつり上げて笑った、その背後――
影が滑り込む。
「エリス、後方に潜入反応ッ!」
ユウナの警告が届くより早く、結界の裏側からドサッと人影が飛び出した。
「わっ!? だ、誰!?」
「やっほ〜、ミレイナでーす♡」
その声に、本物のナナが反射的に叫ぶ。
「えっ、私!?」
観客席がどよめく。
――ミレイナの擬態だった。ナナに化けて結界内部に忍び込んでいたのだ。
(こりゃ一本取られたな……)
ズークの口元がわずかに緩む。だが、ここからが本番だ。
「ジン、いけっ!」
レオンの指示に応え、黒衣の影が一閃。
ジンが転移の軌跡を描き、敵フラッグの目前へと迫る。
(座標、計算通り。あとは回収――)
だがその瞬間、ほんの一拍、彼の動きが乱れた。
「……なっ!?」
空中で、まるで重力が増したかのような感覚。
足元がもつれる。その隙に、結界が自動再展開を開始した。
「《クロック・ブレイク》、効果時間終了っと」
タクミの笑顔。彼の魔法は、局所的な“時間の遅延”。
ジンの動作をほんの数フレームぶん遅らせ、それが決定的な差となった。
結界が閉じ、ジンは回収に失敗。
わずか一歩届かず、転移で元の位置へと戻るしかなかった。
「……くそっ、あと少しだったのに」
フラッグを睨みながら、レオンが歯を食いしばる。
「時間制御を読めなかったのは痛い……でも、まだ終わりじゃない!」
その頃――
擬態を解いたミレイナは、結界内で軽やかに翻弄していた。
「そろそろお持ち帰り、してもいい?」
エリスが目を細め、地面に刻まれた陣が光を帯びる。
「逆向性陣地トラップ、展開。敵の通路を、固定っ」
バシュンッ!
地形そのものが“斥力”で押し出され、結界内のフラッグが一気に射出された。
それを、ミレイナが迷わずキャッチする。
「捕ったぁあああっ!!」
全力疾走。観客席が割れんばかりの歓声に包まれる。
「させるかッ!」
リクが再度の突撃を試みるが――
ユウナが地形の魔力流を読み取り、風圧でリクの進路をそっと逸らす。
「もってけミレイナーッ!」
最後に、サラの補助魔法がミレイナに加速を乗せた。
ドンッ!!
ミレイナが、自陣の旗座にフラッグを突き立てた。
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**――勝負、あり。**
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「勝者! ラボ・エクリプス!」
観客席から大きな拍手と歓声が沸き上がる中、
ズークはそっと目を細める。
(……結界を破る力も、それを守り切る技も、拮抗していた)
誰もが、自分の役割をまっとうした。
仲間を信じ、任せ、動いた――
わずかな連携の差、それだけが勝敗を分けたのだ。
けれど、この対抗戦で本当に得たものは……
この先、彼ら自身が見つけていくのだろう。
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> ――次回、予告っぽく言うと、
> 「迷宮、魔力、そしてちょっとの混乱」
> ……って感じでどう? じゃ、またねっ!




