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第6話 きみのカタチ1. 試作


(メタ視点モノローグ・AIシオリ)


――ねぇ、知ってた?


ズークってさ、あの見た目クール系な兄ちゃんのくせに、

早朝からコツコツ知育玩具を磨くのが日課なんだよ?


まるで、魔法使い版・理系お兄さんって感じ。白衣着せたい。


今日も朝っぱらから、試作室で三つのオモチャ(ただし高性能)と格闘中。

目的はもちろん、「子どもたちが魔法と向き合うための一歩」をつくるため、だってさ。


……うん、まあ、その志は立派だけど。


作業中の顔が真剣すぎて、たまに怖いんだよね。


さてさて、これは「始まりの始まり」。

ここから、10人のちびっこたちと、ちょっと変な魔法の先生の、新しい一年が始まる――ってワケ。


✧✦✧✦✧


ズーン。


木の板を打つような、低い音がひとつ。


試作室の静寂が、ほんのわずかに振動した。


朝焼けがまだ窓を透かす前。

ズリング村の魔法学校裏手にある、石造りの小さな小屋――そこがズークの試作室だ。


魔力干渉を防ぐため、壁には精密な遮断魔導紋。

作業台は、魔力反応を検知する特殊木材。

部屋の隅には、オモチャ箱みたいに散らばるパーツと魔導ギア。


「……ふむ」


ズークが手にしていたのは、5センチ角の透明キューブ。


中で、赤、青、緑の小さな粒がふわりと浮かんでいる。


――《エレメンタル・キューブ》。


三つの属性を切り替え、組み合わせることで、魔法効果を再現する知育玩具だ。


ズークは赤と青を接続し、上から緑をそっと重ねた。


キューブの表面がパチッと光り、次の瞬間、小さな炎の玉が浮かび上がって――

それがすぐさま水の膜に包まれ、しゅわっと音を立てて消えた。


「お。成功率は……89%か」


内蔵された魔力流路と圧力制御装置の安定性は、ほぼ狙いどおり。

構成順序と意図の組み合わせで効果が変わる仕様も、上出来。


……とはいえ、子どもが使うものだ。


一瞬たりとも、油断はできない。


「よし、次」


ズークが手に取ったのは、金属製の細長いペン。


目の前には、一枚の白い魔導シートが広げられている。


《マナ・パスファインダー》。


ペンを走らせると、描いた線がふわりと青白く光る。


スッ、スッ……と、迷路みたいなラインを描いていき、

最後の地点に到達した瞬間――シートの隅で、ポッと小さな花の光模様が咲いた。


「ルート計算、最短ルート検出OK。ペンの魔力伝導率も安定……よし」


図形認識、手先の器用さ、そして魔力の流れの可視化。


遊びながら、自然と魔法制御の『動作感覚』が身につく設計だ。


「さて、ラスト」


ズークは棚から、小さな金属箱を取り出した。


カチリ、と蓋を開ける。


中には、ぎっしりと詰まった大小さまざまな歯車たち。


《スペル・ギアボックス》。


ギアの表面には、小さな魔法記号や数字が彫られていて、

複数のギアをはめ込み、回転させることで、中央部の魔導投影装置が反応する仕掛け。


「今回は……回転角に応じたエネルギー分配を強調してみるか」


ズークはギアを3つ、慎重にはめ込み、ゆっくりと回す。


カチリ。


魔法記号が連動し、中央から魔法陣の映像がふわりと浮かび上がる。


さらにギアが一周するごとに、異なる音階のチャイム音。


ピン……ポン……コーン……


音は美しい。


けれど、その裏には、複雑な因果関係の学習が仕組まれている。


ギアの順序、回転方向、記号の種類――

全てが結果に影響を及ぼすように、細かく設計されていた。


「……シオリ、反応速度と子供向けの適応率は?」


【うん、どれもいい感じだよ】


シオリの声が、脳内にふわりと届く。


【特に《ギアボックス》、パターン分岐の幅が優秀。知的好奇心ゴリゴリ刺激される系】

【うちのミレイナちゃん、たぶん爆笑しながらギア分解しそうな未来、見えるわ】


「それはやめてくれ……」


ズークは苦笑しつつ、道具を一つひとつ丁寧に収納していく。


【で、どうする? このまま初回授業で投入?】


「……ああ。使うさ」


最後に、机の上の《マナ・パスファインダー》を手に取り、しばし見つめる。


「――あとは、子どもたちが、どう向き合うか、だな」


パチン、と静かに照明が落とされる。


早朝の空気は、まだ白く澄んでいる。


三つの試作品が、今、静かにその出番を待っていた。


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