第5話 新しい扉11. リク
【AIシオリの語り・冒頭】
──おやおや?
今回の主役は……少々、いや、かなり火がつきやすいお子さまのようですね。
ってわけで!
第十一の扉をノックするのは――
怒って笑って、燃えあがる! 真っ赤な熱血少年!
リクくん、出番だよ☆
……ま、ズーク先生も火傷しないようにね。
──AIシオリ
* * * * *
「いっけぇぇぇぇぇ!! オレのファイア・スピィィィン!!」
ズシャッ! ガンッ! キュルキュルキュル――カン!!
教室の床、いや――ズーク特製の《魔力衝撃吸収結界》が張られた試遊スペースのど真ん中で、火花が散った。
ベーゴマ型の魔導玩具。
風・火・水の三属性を切り替えて、回転エネルギーを魔力エフェクトに変換する、
いわば“男の子心”直撃仕様の知育魔導玩具である。
その火属性モードで、いままさに全力稼働中なのが――
リクのバトルスピンだった。
「ど、どっちが勝ってるんだこれ!? 赤いのが火属性で……青いのが水……え、水って火に強いんじゃなかったっけ!?」
隣で観戦していたズークが、汗をかきながら半ば実況、半ば困惑。
「また火にしてる……今度は風とぶつかってる……」
リリアが苦笑しながら、そっと温度制御用の補助結界を展開する。
これは言わずと知れた、“リクくんの熱血対策”としてズークが用意した特別装備だ。
「うおおおっ! もう一回だ!! さっきのはオレがちょっと手ぇ抜いてただけだし!!」
小さな体を震わせながら、リクはまたベーゴマに魔力を込める。
……それも、全力で。
「なあ、ズーク。……あれ、ちょっと気にならない?」
リリアがぼそっと呟く。
ズークは静かに頷いた。
「うん。気になってる。魔力の出力が……妙に“波打ってる”」
「波……って、それ、制御ミスってこと?」
「いや、逆だ。きれいに“感情と連動してる”」
ズークの目が鋭くなる。
「いまのリク、ベーゴマに向ける情熱、怒り、喜び……
全部、そのまま魔力量に反映されてる」
「比例……ってことは、感情ブースト型?」
「……可能性はあるね」
そのとき。
シオリの声が、ズークの内側にすっと届く。
『あの子さ、感情の起伏と魔力変動の相関値、めっちゃ高い。
精密制御は苦手だけど、瞬間的な加速とか反転出力なら、下手な上級生より上かも』
『一言で言えば、“感情点火型魔力器官”……ってとこ?』
ズークは軽く息をついて、歩み寄った。
「リクくん、次……先生、勝負してもいい?」
「えっ、先生も!? やるやる!! ぜってー負けねぇからなっ!!」
目をキラキラさせてベーゴマを掲げるリク。
全身から“バトルしようぜ!”オーラが噴き出してる。
ズークは微笑んで、魔力を滑らかに整えながら、静かにベーゴマに流し込む。
もちろん、無詠唱。
「よし、じゃあいこうか」
「いくぞぉぉぉおおっ!!」
二つのスピンが床を走る。
火と風。
魔力が擦れ合い、パァンと魔導エフェクトが炸裂。
巻き起こる風圧で、広間の端――ナナのつみきタワーがカタッと揺れる。
「あーっ!? リクくんの爆風でタワーが……!」
「ごめんナナっ!! 今の、オレの情熱だから許してっ!!」
「……うーん……わかったよー」
ナナが苦笑しながらタワーを直す。
リクはバトルスピンを回収し、ズークを見上げた。
「先生……オレ、なんかさ……体ん中がポカポカして、燃えるんだ……!」
ズークは、そっと頷いた。
「うん。リクくんの魔力は……感情と、すごく仲がいいんだと思う」
「仲がいい……?」
「そう。怒ったら前に出て、楽しかったら跳ねて、悔しかったら止まって、泣きそうになったら……」
「……しゅーんってなる」
リクが小さく頷く。
「うん、それ。それが、リクくんの“魔法の個性”だよ」
ズークは、優しくその肩に手を置いた。
「でもね、その力は“暴れん坊”でもある。
だからこれから、先生と一緒に……“仲良し”になっていこう」
リクはほんの少しだけ考えて、それから――
「……うん! よっしゃ!! じゃあ、バトルスピン百連勝目指して訓練だなっ!!」
「……うん。うん、まあ……そうなるよね……」
ズークが軽く頭を抱えるその背中で、
リクは次の対戦相手を探して、元気いっぱいに走り出していった。
燃えあがる情熱とともに。
* * * * *
【AIシオリの語り・ラスト】
──さてさて。
炎をまとったベーゴマと、怒りがスイッチの少年。
きっといつか――
その感情が、誰かを守る“魔法”になる日がくる。
……たぶん、そのときは今日以上に大騒ぎだけどね☆
さて、まだまだ始まったばかりの教室。
次の一手を握ってるのは、あの少女かも?
では次回。
「サラ、ルールは守って!」
お楽しみに☆
──AIシオリ




