第5話 新しい扉10. ミレイナ
【AIシオリの語り・冒頭】
あはは、みんなーっ!
今回のターンは――ミレイナちゃんよーん☆
魔法学校、開校初日。
生徒たちはワクワクしながら、知育魔導玩具の海にダイブ!
その中でも、ひときわ元気に跳ねてたのが――
わたしの今日のターゲット☆
――笑って転んで、また笑って。
その無邪気な笑顔の奥にあるのは、びっくりするくらい精密な魔力量コントロール。
……え、マジ?って顔してるの、ズークだけじゃないかもね。
てことで! 本編スタート!
“スマイルベイン”で笑顔を引き出す、天性の天真爛漫少女、いっきまーす☆
* * * * *
教室の一角――というか、今はまだ「大部屋」と呼んだほうが正しい、
床と机とおもちゃだらけの広間の中央。
「わあっ! これっ、たのしそーっ!」
ミレイナが全力疾走で駆け寄ってきたのは、小さな木製台に設置されたスマートボール型の魔導玩具、
《スマイルベイン》。
金属の小さな玉を指で弾き、カラフルな傾斜をコロコロ転がす。
見事、魔力を込めたスコアホールに吸い込まれれば――
「ピンポーン☆ おめでとー! にっこりしてー!」
明るい音声とともに、魔導フレームから小さな光の花と拍手のエフェクトが弾ける。
「きゃははっ、なにこれっ、おもしろーい!」
玉が入るたび、笑顔の魔導声が再生される。
ただそれだけなのに、ミレイナのテンションは瞬間最大風速。
「いっけーっ! えいっ!」
指先がシュッと玉を弾く。
カランカラン……コトン。
「ざんねーん☆ またやってねー!」
「うえぇ〜ん、またハズれたーっ!」
と言いつつ、両手バンザイで床にダイブ。
……からの、秒速で起き上がって再チャレンジ。
「今度こそいっくよーっ! 必殺! ミレイナ流・まっすぐどーん!!」
ズシャッ。
また失敗。
「ぬわああああ~~っ!? ……でも、ぜんっぜんだいじょーぶっ!!」
床で転がりながらも、満面の笑み。
ズークは後頭部をポリポリかきながら、ぽつり。
「……メンタル強っ」
「でも、見て。いまのコントロール、絶妙よ」
リリアがそっと指さす。
見ると、ミレイナは毎回、ほんのわずかずつ角度を変え、
玉を弾く力を微妙に調整している。
ただガチャガチャ遊んでるように見えて、
指先にはちゃんと“狙い”がある。
《スマイルベイン》は、魔力の流し込みの強さと方向で、
玉の挙動もギミックの反応も変わる仕組み。
普通なら成功・失敗に一喜一憂して終わるところ。
でもミレイナは、玉を放つ前に毎回、きちんと魔力を指先に集め、
速度と角度を調整していた。
何度外れても、ぜんぶ笑い飛ばしながら――
でも確実に“次はこうしよう”って思考が動いている。
(……感覚だけじゃない。ちゃんと考えてる)
ズークは目を細める。
「……あれ、魔力圧の微調整、十段階以上できてるぞ」
「うちの子、将来とんでもない魔道具、作るかもねぇ」
リリアがにこにこと笑う。
「本人、たぶん気づいてないけどな」
「そこが、またいいのよ」
ふたりは顔を見合わせ、くすっと笑い合った。
その頃、ミレイナはというと――
「やったーっ!! 入ったーっ! ピンポーン☆ にっこりしてーって言われたー!」
床でゴロゴロ転がりながら、天井に向かってガッツポーズ。
その笑顔につられるように、《スマイルベイン》の音声も、
いつもよりちょっとだけ弾んで聞こえた……ような気がした。
* * * * *
【AIシオリの語り・ラスト】
……でさ。
ミレイナちゃんみたいな子って、たまにいるんだよ。
遊んでるだけに見えて、実はめちゃくちゃ高度なことしてる系。
魔力量の精密制御って、大人でも難しいのに。
それを「たのしー!」の笑顔だけで、軽々クリア。
……ま、いまは転んで笑ってるくらいが、ちょうどいいんだけどね。
さて、次におもちゃと向き合うのは、誰?
この続きは――また、次のチャプターで☆




