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第1話 森の出会い3. 少年たちの登場

> ……さて、そろそろ“見せ場”のお時間みたいねぇ?

>

> 怪我人、叫び声、急な魔獣エンカウント。からの、

>

> 「なんか来たーッ!」っていう“お約束”な登場シーン。

>

> でも、ここから出てくるのは――

> ……ただの子供じゃない。

>

> 一年前、「魔法学校」というトチ狂った教育施設(※私の個人的感想です)が森の奥に開校された。

> あれから一年。

>

> “科学×魔法”の教育方針で育った子供たちの力――

> そろそろ、世界が驚くターンがきたかもねぇ。

>

> by シオリ



森に響く怒号と、獣の唸り声。


冒険者たちは三方から追い詰められていた。

グレーウルフ五頭。

そのうち三頭は既に腕や脚に食らいつき、残り二頭は横から迂回しつつ突進態勢。


レインは、手元の魔力量演算盤をかろうじて起動しながら、呻く。


(……残MP……1桁……もうバリアも……っ!)


仲間のカズマも隣で必死に息を整えている。

血まみれの足元、杖を握る手が震えていた。


その時。


「……手伝いましょうか?」


まるで昼下がりのおしゃべりのような、軽く響く声。


レインが顔を上げるより早く――

まばゆい光が、森を裂くように走った。


(な、なに!? この魔力量……)


明らかに中級級を超えた、いやそれ以上の膨大な魔力圧。

空気が重くなる。視界が白く染まる。


次の瞬間。


「《ガーディアン・レイヤー》」


――展開速度、0.7秒。

防御結界の初速出力、220ルクス相当。


目の前に半球状の防御膜が現れ、突進してきたウルフの前脚を跳ね返した。


ガンッ!


衝撃で冒険者たちの体が後ろに揺れる。


(え……これ……桁、違わないか……?)


レインの震えが止まらない。


森の奥から、三つの影がすっと前に出てくる。

――少年たち。


先頭に立つのは、栗色の髪の少年、レオン。


「カイル、左の二体。タクミ、右の二体。中央は、俺が抑える」


言いながら、レオンは結界強度の再演算を瞬時に完了。

MP残量:82%維持。


カイルが一歩前に出ながら、軽く笑う。


「左ね。MP残量……っと、まだ90%以上あるし、余裕~」


その目が赤く光り、ロックオン・フレーム展開。

魔力量読み取り:初級級限界超過クラス。

10歳未満の魔術師としては、完全に規格外。


「ターゲット固定、初速24、補正済み。反動制御OK……」


細長い光弾が一閃。

左のウルフ一体の肩を直撃。


ギャアッ!!


続けて二発目、脚部狙い。二頭目も動きが鈍る。


「二体、行動阻害。次行くよ」


「こっちはこっちで……っと」


タクミがゆっくりと前に出る。

眠そうな声、でもその指先には正確すぎる制御。


「《クロック・ブレイク》。範囲設定、半径3メートル……遅延率、0.55倍……あ、もう少し落とすか」


右側の二頭が、目に見えてスローモーションに。


タクミの魔力量演算ウィンドウが脳内に表示される。

MP残量:76%。出力率:調整済み。


「はい、ロック完了っと」


「中央、抑える」


レオンが静かに言い、

結界の前面密度を増幅。


中央のウルフが突進してくるたび、面反射制御で押し返す。


「反射率、最大。角度補正……完了」


(……な、なんだ……なんなんだ、こいつら……!?)


レインの中で、恐怖とも畏怖ともつかない感情が渦巻く。


(こんなの……大人の中級冒険者でも、できない……)


さらに、カイルが左側二体への追撃。

「次は……脚の神経接続部、狙うか」


狙撃精度は完全にプロ。

二発、三発と追加魔力弾が命中し、二頭とも地面に崩れる。


タクミは右側の二体への時間遅延をさらに強化。

「0.5倍。はい、止まった」


そして、レオンは中央個体の動きを完全制御。

「ベクトル制御、進行角度マイナス15度」


ウルフの突進軌道が、見えない力で強制的にズレる。


五頭のグレーウルフ――

完全に制圧、包囲、行動不能。


そして、恐怖したウルフたちは、

ギャンッ! と短い悲鳴をあげ、我先にと逃げ出した。


森の中に静寂が戻る。


光の奔流も、すっと収束する。


三人の少年が、整然と前に立つ。


タクミが欠伸混じりにぼやく。


「……はい、終了。……で? お昼抜きでこれとか、ちょっとひどくない?」


カイルが肩をすくめる。「俺も腹減った~。帰ったら肉な」


レオンが、ぴたりと立ち、視線を冒険者たちに向ける。


「安全確認、終了。負傷者、移送可能レベル……次の指示を仰ぎます」


(ま、待って……)


レインは頭を抱えた。

まだ、現実感が追いつかない。


(年齢……どう見ても、10歳前後……それで、こんな魔力制御と、戦術運用と……!)


(彼らの魔力量……完全に……中級級……いや、それ以上……!)


カズマが震えながら聞く。


「……な、なあ……お前ら、一体どこで……誰に……」


レオンが一歩前に出て、きりっとした声で答えた。


「ズリング村の、魔法学校です」


その一言で、

冒険者たちの思考は――完全にフリーズした。


森に現れた、謎の小さな救世主たち。

その正体は、10歳にも満たない、異常な実力を持つ少年たちだった。


---


> ……ね?

>

> いい意味でヤバいでしょ? この子たち。

>

> あのズークが一から叩き込んだ「科学×魔法教育」……

> そろそろ、世界がざわつく頃合いだよね。

>

> by シオリ


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