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第5話 新しい扉2. 導入


──あたしの名は、シオリ。

脳内AIとか、思考補助装置とか、呼び方はいろいろあるけど、要するに“彼”の中にいる、ちょっと優秀な女。

今、舞台はズリング村のど真ん中。

そして始まるのは、魔法教育という名の、未来をひらく大実験。


……てなわけで。


新しい朝。

ほんのり秋めいた空気を感じながら、10人の小さな足音が、教室の前にパタパタと集まってくる。


「うわあっ! 本当に始まるんだね!」


先頭を走ってきたのはミレイナ。声も笑顔も、120パーセントの全開モード。

そのすぐ後ろから、レオンとカイルが並んでやってくる。


「ほら、押すなって」

「押してないよ、自然に進んでるだけ」


慎重派のユウナとジンは、やや後方に控え、

ナナはというと、ぼーっと空を見ながらのんびり歩いていた。


「たぶん今日は……ぶどうパンの匂いがしてる気がする……」


いや、それ教室と関係ないから! と誰かがツッコむ前に――


ズーンッ!


教室の扉が、魔力の流れに応じてゆっくりと開いた。


中に入ると、そこはもう“ただの教室”じゃなかった。


宙にふわりと浮かんだ木製の展示棚が、くるくると自転車の車輪みたいに回りながら列をなす。

その上には、カラフルで見たこともない形の魔導玩具たちが、まるで「さあ、選んでごらん!」と手を振るように並んでいる。


「え、なんで飛んでんの!?」

「え? 棚って……普通、置くよね?」


タクミとエリスが口々に言った瞬間――


パッ!


天井から降りてきた光の帯が、きらきらと床に魔法陣のような模様を描き出す。

それは視覚エフェクトを使った、ただの演出。だけど、子どもたちの目は釘づけだった。


「ズーク先生の……魔法、かっこいい……!」


そうつぶやいたのは、規律重視のサラだった。

彼女の目がこんなに輝いたのは――たぶん、初めて。


ズークは教室の中央に、静かに立っていた。

無詠唱で空間操作系魔法を展開し、棚の浮力と安定制御を維持したまま、全体の動きと演出を見守っている。


脳内には、シオリの声。


《うん、ちゃんと全体の魔力流制御できてる。展示棚7個、重力補正OK、回転速度もギリセーフ》


──にしても、まるでテーマパークだな。


ズークは心の中でつぶやいた。

けれど、それでいい。


子どもたちがわくわくして、自分から一歩を踏み出したくなる場所。

それが、この教室の“設計思想”だった。


「みんな、それぞれ好きなものを選んでいいよ」


ズークの一言で、子どもたちは一斉に棚へ駆け出す。


「えっと……これなんだろ、『ピカピカりんごのつみきタワー』?」

「待って、これ回すとしゃべるの? 『まわして!ことばリング』? へぇぇ~!」

「オレこれ! バトルスピン! 絶対つえーやつだ!」


リクが勢いよく棚からベーゴマを取り出し、近くにいたジンが無言でうなずく。

その二人の背中を見ながら、リリアがそっと歩み寄って声をかけた。


「リクくん、ジンくん。その玩具は、力を入れすぎると床が傷ついちゃうから、こっちのマットの上で回してみようね」


「……はい」

「ん」


リリアは、やさしく、でも的確に声をかけていく。

目線を合わせて、一人ひとりに丁寧に。


その間、ズークは記録用の魔導ペンと観察用のフロート・スコープ(浮遊型観測装置)を展開し、

各生徒の魔力量、玩具への反応、集中傾向などを細かくチェックしていた。


《やっぱミレイナ、オーブ・ドロップ選んでる。光って鳴るやつ、大好きだもんねー》

《エリスは……出た、やっぱり『くみたて!マギ・ギアズ』直行》

《うーん、サラとユウナは『ことばの石板』と『ルーン・パネルズ』……安定の座学志向》


情報がどんどん積み重なっていく。

ズークの脳内では、10人それぞれの“成長曲線”と“魔力傾向”が、すでにグラフ化され始めていた。


《でもさ、ズーク。あんた、本当にこれが“学校”でいいって思ってるわけ?》


──ああ。

──ここから始める。ひとりひとりの「できた」が生まれる場所。

──それが、俺の学校だ。


教室には、笑い声が響き続けていた。


---


次回、ズーク先生が目撃するのは……?

想定外の「超魔力誤操作」事件!?

それとも――まさかの恋のライバル登場?(違います)


また教室で会いましょう、ね♡ ──シオリ


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