第3話 ひとりじゃないから6. 旅立ち
《メタ語り:AIシオリ》
星ってさ、昔の人は「天の穴」だと思ってたんだって。
世界の布が、ちょっとだけ破けて――向こうの光が漏れてる、みたいな。
ロマンチックっていうか……まあ、ただの誤解なんだけどね。
でも、そんな夜。
ズークは湖のほとりで、それをじっと眺めていた。
火の粉が夜風に舞い上がるなかで、彼の中に――ある決意が、静かに芽生えつつあった。
◇◇◇
「……もっと、外の世界、見てみたいんだ」
焚き火の音に混じって、ズークの声が夜空に溶けていく。
秋の夜。
村の収穫祭が終わり、みんなが帰ったあとの静かな湖畔だった。
その隣に座っていたのは、リリア。
膝を抱えたまま、焚き火を見つめている。
横顔に火が揺れて、まるで物語のワンシーンみたいだった。
ズークの言葉に、彼女は少しだけ間を置いてから、ぽつりと言った。
「……行くんでしょ?」
静かな声だったのに、なぜか耳に強く残った。
「……うん」
ズークは、ゆっくりとうなずいた。
「この力で誰かを助けられるなら……村みたいな場所を、もっと増やしたいんだ」
「安全な魔法」――その言葉が、彼の中でぼんやりと、けれど確かに形になり始めていた。
壊す魔法じゃない。守るための魔法。
恐れられる力じゃなくて、誰かの日常を支える技術。
リリアは、手のひらで膝をトントンと叩いてから、ふっと微笑んだ。
「じゃあ、ちゃんと帰ってきてね」
「……え?」
「私はここで待ってるから」
そう言って、リリアはズークをまっすぐに見た。
揺れる火に照らされたその瞳は、まるで……約束の印みたいだった。
ズークの心臓が、ズン、と音を立てた気がした。
「……うん。絶対、帰ってくる」
それが、二人の「約束」になった。
焚き火がパチリと音を立てる。
火の粉が夜空に昇っていって、どこかで星にまざった。
◇◇◇
翌日。
ズークは、村長の家を訪ねていた。
木の匂いが漂う、小さな部屋。
村長は、古びた箱をゆっくりと取り出した。
ふたを開けると、中には赤茶けた石が一つ。
布にくるまれて、静かにそこに収まっている。
手のひらサイズ。ところどころにひびが入っていて、けれど、石の奥からはほんのりと温かな光がにじんでいた。
「お前の両親が……旅で使っていたものだ」
ズークは、息をのんだ。
「……魔道具の核石?」
「そうだ。本体はもう、壊れて久しいが……核だけは残った」
村長は、その石をズークの手に、そっと乗せる。
「お前なら、きっと使いこなせる」
その言葉に、ズークは黙ってうなずいた。
石の重みが、じんわりと掌にしみる。
たぶんそれは、単なる“重さ”じゃない。
もっと、深くて古い――何かの記憶だ。
(父さん、母さん……)
両親の記憶は、ほとんど残っていない。
でも、この石が、それを語ってくれている気がした。
(……俺は、行くよ)
そのとき、不意に――脳内に、軽やかな声。
《おっ、ついに来たね〜〜「旅立ちフラグ」!》
「いや、別にフラグってわけじゃ……」
《いやいや。焚き火と星空と約束と古道具とか、これもう“立て方”がテンプレすぎじゃん?》
「……黙っててくれる? いまちょっと、真面目なとこなんだけど」
《あーごめんごめん、じゃあ最後にひと言だけ》
ズークが無言で「……何だよ」と目を細めると、シオリは珍しく、低く静かな声で言った。
《いい選択だったよ、ズーク》
ほんの一瞬、ズークは驚いた顔をして――でも、すぐに笑った。
◇◇◇
そう。これは「旅立ち」の話だけど――
一人で始めた旅じゃなかった。
支えてくれた村の人たちがいて、
信じてくれた誰かがいて、
背中を押してくれる“声”があって。
その全部を、胸に抱えて。
ズークは歩き出す。
◇◇◇
《メタ語り:AIシオリ》
――さてさて。
これでズーク、ようやく“スタートライン”に立ったって感じ?
あたし的にはさ、15歳にしては上出来すぎでしょって思うんだけどね。
でもまあ……ここからが本番。
彼がこの先、どんな出会いをして、何を築いていくのか――
ちょっとずつ、見せてあげるよ。
次回!
**「旅のはじまりと木の杖」**
あ、ちなみに杖は……飾りじゃないからね? 使うからね?
お楽しみにー☆




