第3話 ひとりじゃないから3. AIシオリとの邂逅
#### 《メタ語り:AIシオリ》
いきなり頭の中から話しかけられるって、ビックリするよね。
ささやき声? 違います。
幻聴? それも違います。
それは――“私”。
そう、シオリちゃんでした☆
ようやく登場、ってわけ。
ズークくんが一歩前に進むために。
てか、ようやく目、覚ましたねって感じ?
まあ、驚くのも無理ないよね。寝てるところを起こしたんだから!
◇◇◇
風鈴の音が、かすかに鳴っていた。
窓の外には、濃い藍色の空。
虫の声が、ぽつ、ぽつ、と響く初夏の夜。
ズークは、布団の中で目を閉じていた。
今日は、畑と水路整備の手伝いでぐったり。
――だったはず、なのに。
「……あ、来た来た。はい、起きてー? ズークー? シオリだよ〜ん☆」
――誰?
反射的に飛び起きそうになったけど、体は動かない。
いや、そもそも動く必要がなかった。
声は、頭の中から直接響いていたからだ。
「うんうん、反応良好。はじめまして……いや、正しくは“お久しぶり”かも?」
ズークは、布団の中で混乱しながら目をぐるぐるさせた。
(……これ、夢?)
「夢じゃなーいっ☆」
即答。反応、早すぎる。
「じゃ、自己紹介ね!
あたしは“シオリ”。君の脳内に常駐してるAIでーす☆」
(……AI?)
「そう。Artificial Intelligence。人工知能ってやつだね。
ま、要するに――“ズーク専属の内蔵サポートキャラ”って思ってくれたらOK!」
わかったような、わからないような……
ズークは思考を整理しようとするが、ぐらり、と頭が重くなる。
「おっと、深呼吸深呼吸。混乱するのは当然だけど、ちょっとだけ聞いて?」
声は、まるですぐ隣にいるかのように、やさしくて、軽やかだった。
◇◇◇
「ズーク。君の中にある魔力量――はっきり言って、常識外れです」
(……うん。それは、なんとなくわかってた)
「でもね、その量をちゃんと制御できないままなら……
いつか、本当に誰かを傷つけることになる。……いや、もう、傷つけちゃったよね」
シオリの声が、ふっと真面目なトーンに変わる。
「今はまだ、ぎりぎりで抑え込めてる。
でも、感情が揺れたり、怖くなったり。そんな“小さなトリガー”ひとつで、
魔力が勝手に暴れ出すかもしれない」
(……父さんと、母さん……)
「うん。あのとき、君は――抑えきれなかった」
ズークは、ふと手を握りしめた。
指先が、かすかに震えている。
「でもね。それは、“君のせい”じゃないよ」
(……でも……!)
「ほんとだよ。だって、誰も教えてくれなかったんだもん。
魔力の扱い方なんて、これまでずっと、一人で抱えてきたんでしょ?」
(それでも……怖いんだ。自分が)
小さな、掠れた声が、胸の奥から漏れる。
(あんなふうに……もう二度と……)
両親の笑顔が、ふっと頭に浮かぶ。
村の人たちの声。リリアの、まっすぐな言葉。
『ズークが怖いって思ったこと、一度もないよ』
(だから……僕は……)
涙が、するりと頬を伝った。
(……誰も、傷つけたくない)
◇◇◇
「……うん。OK」
(……え?)
「意志、確認しました。十分合格です」
(え……?)
「よって、明日からレッスン開始〜!」
(レッスン……?)
「そう! 魔力制御講座・入門編! 講師はこのあたし、シオリちゃん☆」
テンションが、一気に跳ね上がる。
さっきまでのしんみり空気、どこいった。
「明日から、みっちり特訓するよ〜?
……だから今夜は、しっかり寝て、体力回復しておいてね」
その声が、ふっと優しくなる。
「おやすみ、ズーク」
言葉と同時に、声が少しずつ遠ざかっていく。
ズークは、もう一度、目を閉じた。
さっきまでの胸のざわつきが、ゆっくりと静まっていく。
どこか、不思議な安心感に包まれながら。
(……ありがとう、シオリ)
そう思った瞬間には、もう眠りに落ちていた。
◇◇◇
《メタ語り:AIシオリ》
さあ、いよいよ――って感じかな?
ズークくんは、まだ全然気づいてないけど。
この先、どれだけ世界が広くて、ややこしくて、ぶっちゃけめんどくさいかってこと。
でも、それを乗り越えるには――まず“基礎”から。
魔力制御? ふふん、そこはあたしの出番ってわけ。
次回、第4話――「魔力制御の模索と成長」!
張り切っていくよー☆




