どっちに抱かれたい
千夏はベッドに押し倒され、冬馬に激しくキスされていた。
「冬馬」
千夏は唇を離し、ジタバタと暴れる。真上にある冬馬の顔を見た。何かに取り憑かれたような顔をして、普通ではない。
「やだ」
「俺のこと好きなんだろ」
「そうだけど」
冬馬は千夏の鎖骨に顔を埋め、肌に強引に吸いつく。千夏はのけぞり、その顔を引き剥がそうとする。力が強くて、どうにもできそうにない。
「だったら黙って抱かれとけ」
冬馬の息が荒く、激しくなっていく。今度は首筋に強く吸いつき、噛みついた。千夏はびっくりして全身を痙攣させる。
「こんなの、嫌」
「なんで」
強引な手つきとは裏腹に、冬馬の口調は冷静だ。それからワンピースのVネック部分を掴み、無理やり胸元をこじ開ける。ブラをつけた胸がポロリと飛び出す。
「嬉しくない」
「どうして」
冬馬はブラの中に手を突っ込んだ。
「私の好きな人はこんなこと、しない」
千夏の目からは涙が噴き出す。冬馬はそれを見下ろし、鼻で笑う。その目は怪しげに光り、千夏は言葉を失った。
「お前こそガキ臭えこと、言ってんじゃねえよ」
冬馬はスカートを勢いよくまくり上げる。千夏のパンティを両手にかけ、グッとずり下ろす。千夏は悲鳴を上げた。
「やめて」
千夏は息を荒げ、正秋に襲われかけた日を思い出す。あのときはどうしたんだっけ。どう切り抜けたんだっけ。
ようやく思い出し、冬馬の股間に手を伸ばそうとしたときだった。冬馬が急に体を離した。千夏は驚いてその顔を見上げた。
「おい」
乱暴な問いかけに、千夏はビクッと体を震わせる。冬馬はベッドの上に膝をたて、仰向けになった千夏に馬乗りになり、冷たく見下ろしている。千夏は胸元を手で隠し、生唾を飲みこむ。
「な…に…」
千夏は肩で息をする。
「嫌いか。こういうことする、俺」
その表情はとても険しい。
「嫌いなわけがないじゃん。好きだから。悲しい」
「じゃあ、やめるか」
「え」
「やめてほしいのかって聞いてんだよ」
千夏は答えられない。呼吸が速くなり、心臓がドクドクいいだす。脳内はパニックをおこし、完全に収集がつかない。自分は本当はどうしたい。何を望んでいる。涙だけが、とめどなく溢れる。
「マサさんと俺と。どっちがいいんだよ」
冬馬は身をかがめてくる。その目は血走り、今にも飛び出しそうだ。こめかみのあたりにも青筋が立ち、凶暴そうなその顔は正視できそうにない。怖くて顔をそむけると、冬馬が片手で千夏の両頬をつかみ、強引に目を合わせる。
「どっちに抱かれたい」
千夏はギュッと目をつぶる。
「千夏。答えろ」
尋問のような口ぶりに、千夏は頑張って呼吸を整える。そっと目を開け、冬馬の顔を改めて見つめる。愛しいその顔から凶暴さがフェードアウトし、今度は苦しそうな表情が浮かぶ。千夏の唇が波打った。
「なんで。なんで、答えなきゃなの。冬馬にとって、私は友達なのに」
千夏は肩で息して、しゃくりあげた。そうだ。大事な友達だと冬馬は言った。なのに、なんでこうなる。私は単なる性欲の捌け口か。
冬馬は黙って千夏を見つめ続ける。悩んでいるような、もがいているような表情になる。そっと手が伸びてきた。その手は千夏の涙をぬぐい、こめかみや髪を静かに撫でる。撫でながら降りてきて、親指が千夏の唇の中に侵入する。千夏はその親指を軽く噛んだ。
千夏は甘噛みしながら、冬馬の腫れた頬に手を伸ばす。優しく、愛情を込めて、何度も撫でる。冬馬は目を閉じ、気持ちよさそうに顔を預けてくる。それでも眉間にはシワが寄ったままで、苦悶しているのは分かる。
「そのはずだった」
聞こえないくらいかすかな声でつぶやく冬馬に、千夏はさらに手を伸ばす。今度は冬馬の頭の後ろをそっと撫でる。冬馬はその手を掴み、ゆっくり目を開けた。
「…冬馬」
次第に、怖さがなくなった。心臓の鼓動は勢いを増す。
「千夏。質問に答えて」
冬馬の瞳は揺れている。千夏はその瞳に吸い込まれ、完全に自我を失った。
「冬馬が、いい」
千夏が小さな声で答えると、冬馬は自分が着ているシャツのボタンを外し、ズボンを脱ぐと、床へ放った。再び千夏に覆いかぶさり、唇を激しく重ね合わせた。




