向かう終焉
今回の影の尖兵との戦闘は記録には残さない事と
なった。
騎士団はその日の報告を書類にまとめ、提出する
義務があった。
だが、無力化した祭壇は魔物を寄せ付けないもの
へと変わった事で、これらの被害を減らす事がで
きる。
たまに、被害届が出され、その度に赴いていた黒
の騎士団としては、良い結果と言える。
帰路の間、ティターニアは何やら考え込んでいた
ようだった。
カストラール帝国の王都に着いて数ヶ月。
もうすぐ建国祭があると騒がしくなった頃。
一つの大きな訃報が届いてきた。
それは…隣国セイクリット公国の終焉を知らせる
ものだった。
ルシアがショックを受けないようにと、ティター
ニアが気遣っていたが、ルシアは平然とそれを聞
いていた。
王族は逃げたと報告書にはあったが、未だ安否は
知れない。
「始まったわね……」
マリアがポツリと漏らした言葉。
それは、この物語がラストへと向かっている事を
意味していた。
建国祭前夜、セイクリット公国の東の山の中腹に
見たこともない魔物の姿を見たという報告が上が
る。
ーーそこへ向かうガゼル一行ーー
それがガゼルを見る最後になったーーーーーーー
ティターニアは両手で頬を叩くと、気合を入れる。
「ティターニア様っ!」
慌てる侍女を振り切ると、父の書斎へとむかった。
昔の記録があったはずだ。
宝物庫眠っている昔の勇者が使ったと言う剣。
あれは特別な素材でできている。
それを元に作られたのは、今影の尖兵と戦っている
武器だった。
「お父様!」
「おぉ、ティターニア。可愛い娘よどうしたんだい」
「建国祭などやっている場合じゃないです!」
「あぁ、隣国の事か。それなら手は打ってある」
そう言うと、昔使われていた剣が机の上に乗ってい
たのだった。
「これは昔に使われていた?」
「そうだ。これで元凶を叩けばいい。かなり古いは
ずなのだが……ほれ、この通りじゃ」
剣を抜くと、刀身がまるで生きているようにギラギラ
としていた。
自分の出番を待っているかのようだった。
「最近、黒の騎士団の活躍が目覚ましいと聞いてい
たからな、今回は白の騎士団に行ってもらおうと
思っておってだな…」
「えっ……それは……」
「セイクリット公国へ赴くように言う予定だ。無事
帰ってきたなら、お前との結婚も考えようかと思
ってな…」
「………!!」
そんな事、冗談じゃない。
だが、実際はガゼルが死んで爵位を上げる事になる。
もしかしたら、分かっていたのかもしれない。
あえてシグルドを行かせたいのかもしれないが、彼
は絶対に行かない。
きっと聖女であるマリアがそれを阻止するだろう。
久しぶりに神殿へと行くと、マリアが走ってきた。
「わぁ〜、久しぶり〜元気だった?」
「えぇ、そっちはどう?」
「うーん、まぁまぁかな。あとはアルベルト皇子
かな〜」
「そう……もうすぐ黒の騎士団が例の場所に向か
う事になるわ」
「うん、分かってる。陛下の寝所にある書物は読
んだ?」
「?」
マリアが言うには、陛下の寝所に昔の文献がある
らしい。
そこには、今回と同じ事が起きた時の対処と、最
後どうなったかが書かれているらしい。
そして、あの剣で切るとその代償を払わなければ
ならないらしい。
強力な武器だが、代償が大きい。
どんな物でも切れる代わりに代償として人の魂を
食うのだと言う。
ガゼルが身体を乗っ取られて再び現れる理由も、
もしかしたらそこにあるのかもしれない。
「なら、武器は使わない方がいいわね」
「それもそうも行かないのよ。アレでないと倒せ
ないのよ。貴方も知ってるわよね?最終形態の」
「……」
ゲームの際によく見た場面だったから覚えている。
あれは完全にチートに見えた。
最後の戦闘シーンはコマ送りで終わった。
そしてガゼルが帰って来ることはなかった…と。
でも、実際は戦っていたはずなのだ。
戦って、戦って、傷ついて……そして……。




