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やきもち

レオナルド・ハリントン。

彼は大海原を航海する大商人だ。


表向きは……だが。

実際は落ちぶれ貴族の3男にして、海賊船を襲う

義賊とされている。


彼が登場するのは、このペリーエ港に影の尖兵が

よく出没するようになってからだった。


たまたま居合わせた、レオナルドは住民を護り、

一躍有名になる。


そして、王族のパーティーに招待されてマリアと

出会う事になる。

なぜなら、彼が最後の攻略対象者だからだ。


だが、そのきっかけとでもあるはずの問題を昨日

取り除いたせいか、今は全く知り合う機会すらな

くなったと思う。


「イクシルート様、あの大きな船は?」

「あれは、ここらでは有名な人の船ですよ。今ま

 で誰も成し得なかった偉業を達成し遠くの国か

 らの物資を大量に運んできてくれるのです」

「それは……やり手なのでしょうね」

「えぇ、まだ若いのに、凄い人ですよ」


ティターニアの視線はじっと船に釘付けにされた

のだった。


最後の攻略対象。

どんな人物だったか。

それは、あまり覚えていない。


なぜなら、後半で出てくるのだが、好感度を上げ

る為のイベントが少なく、レオナルドを優先する

と他の対象者がMAXまで行かず、中途半端になっ

てしまい友達エンドになってしまうからだ。


それでは最後に起こるボーナスイベントが発生し

なくなってしまうのだ。


ガゼルをより長く眺める為には、シグルドルート

を完遂させるのが一番いい。


なぜならライバル視しているせいかなんだかんだ

と絡んでくるシーンが多いからだった。


最初は普通にシグルドルートを選び、最後までい

ったのだが、ふとガゼルの最後に見せた表情に惹

かれるものがあった。


それ以来、毎回ガゼルの視線を追うようになった。

それが、ガゼル推しになったきっかけだった。


多分、作者もガゼル推しだと思う。


その理由は、ガゼルの死を帝国の歴史上に残る英雄

と描いた事だ。


そして、誕生日の日にちを物語上のシナリオで描い

た事だった。


その事で、シグルドファンから問い合わせが多く。

攻略者全員の誕生日を教えて欲しいという問い合わ

せが増えて、設定資料集が出た時に、一緒に乗った

のだという。



「どうかなさいましたか?」

「いえ、なんでも無いわ」


つい、記憶をたぐり寄せていたせいで、ぼうっとし

てしまった。


今は、イクシルート卿と会話中だったのだ。

ティターニアはじっと眺めた後、街へと行くと言い

出したのだった。


「あの船を間近で見たいわ」

「そうですよね…ふふっ、私も最初は凄く興味を惹

 かれたのです」


イクシルートも初めて見た時は、驚いたものだと言

う。


船の大きさも豪華さも、ほかと違って桁違いだった

からだ。


そして、その船の船長がまた若い事から、余計に興

味が出たらしい。


「紹介してもらえないかしら?」

「いいですよ。皇女様も、彼の持ってくる品にはき

 っと興味を惹かれると思いますよ」

「あら、それは楽しみだわ」


仲良く話す、イクシルート卿とティターニアの会話

を聴きながら、ただ黙って護衛達は目の前のケーキ

を口に運んだ。


本来護衛は外で待っているものだったが、ティター

ニアの提案で全員中で一緒にティータイムとなった。


これには前代未聞だった。

が、予想以上に騎士達は喜んでいた。


そんな表情を見ていると、ガゼルだけが気を張って

いた事に拍子抜けした気分だった。


「本当にこれではデートを見ているようだな……」


自分の口から出た言葉に、違和感を感じる。

今、自分たちはティターニア皇女の護衛をしている。


そして、彼女は今、イクシルート卿と共にいる。

そこに自分の入る隙間などない。


ないのに……どうにも胸が痛い。

こんな感情持ってはいけない。


あの夜の、唇の柔らかさを思い出すとふわっと、あ

の時の匂いが蘇った。




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