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東D区画  

ティターニアは指定された通り倉庫に行くと武器

を手に取った。


そもそも武器と言っても、重いものは振り回せな

い。


剣も槍も持っているだけで精一杯なのだ。

小型の拳銃などがあれば良かったが、この世界に

そのようなものはない。


唯一ボーガンが軽さ的にも丁度いい感じだった。


ただ矢を引く時に多少の力が必要な程度だ。


「もう、本当に古いんだいら…」


武器もそれを納める倉庫も老朽化が激しかった。

今建築予定の寄宿舎と訓練場が早く出来上がる事

を切に願うだけだ。


動きやすい正服に身を包み、武器も持った。

馬小屋から大人しい子を借りると東にあるD区画

へと来たのだった。


建物は崩壊しており、その後の火災で焼けた建物

が目立っていた。


「本当に酷い有様ね……」


実際に見ると瓦礫の間から人間だったものが出て

いる。


死体の回収もまだ行われていないのだろう。


「ガゼルが一人で行けって言うくらいだし、安

 全ではあると思うけど…やっぱり、一人は怖

 いわね…」


いつでも使えるように矢をセットしたが、それも

引くだけで一苦労だった。


ガタッと後ろで瓦礫が崩れる音がする。


ハッと振り向くと、近くで煙を上げて家屋が崩れ

ていく。


「何よもう、驚かせないでよね……」


渡された書類は安全確認をする場所と、確認事項

がつらつらと書かれていた。


「ゲームじゃ、こんな場面無かったわね…」


何度もプレイしたので飽きるほど見てきた。

そもそも皇女はこの時、早々に都外へ避難し悠々

と、シグルドをどうやって攻略するかを考えてい

る頃だったはずだ。


ガララッ…。


「また瓦礫が崩れたの?ちょっと作りが雑過ぎる

 んじゃな……えっ…!」


振り向いた所には黒い影が落ちて居た。

まだ昼間だと言うのに、獣の形をした影はゆっく

りとティターニアを伺って居た。


「うそ……でしょ……」


影の尖兵……彼らは昔から各国が頭を悩ませるモノ

だった。


影から生まれ、倒す事はなんら難しくはない。

銀鉄で作られた武器で切れば殺す事は可能だ。


だが、問題はその数だった。


魔物のように単体で襲うのではなく、群れで押し寄

せてくるのだ。

そのせいで、何人もの騎士が殉職している。


この原因を突き止め解決する事がこの物語りの最終

クエストだった。


ただ、それには多少の犠牲がつきものだった。

それがガゼル卿だった。


一人で解決して、命を落とす。

その功績もライバル的存在のシグルドが持っていく

のが実に気に入らなかった。


ジリジリと、距離を詰めてくる影にティターニアは

持っていた武器を構える。


一発。

たった一発しか打てない。


次の矢をセットするまでに、時間がかかる上に影は

待ってはくれない。


手が震え出す。

ゲームならいざ知らず、実際に戦うとなると恐怖

で足が動かない。


影の尖兵の速さは馬並みだと書いてあった。

多分、今のティターニアでは逃げきれないだろう。


目の前の影が一気に距離を詰めると飛びかかってき

た。


咄嗟に打った矢は当たるわけもなくどこかへと飛ん

でいく。


もうダメかと思った瞬間。

目の前に人が出てきた。


「皇女様、お下がりください」

「……どうしてあなたが」


突然現れた銀色の髪が目の前の視界を遮ったの

だった。







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