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噂の一人歩き

最近ではティターニア皇女に対する印象が変わって

来ていた。


お茶会に来た人をはじめとして、騎士団内部でも、

悪い噂は払拭されつつあった。


その理由には、最近の皇女の行動が原因かと思われ

た。


街の警備を担当する緑の騎士団には毎回皇女の名で

差し入れが届く様になった。


門前の騎士にも差し入れとして渡される事があり、

それがなかなかに美味しいと評判で、礼儀をわきま

えず立ち食いできる様な仕様になっているせいか、

職務中に簡単に取れると評判の声が上がった。


それは勿論黒の騎士団にも同じ様に差し入れされる

物で、そっちには皇女自ら運んでいく。


王宮内部警備の白の騎士団が常に優遇されていたの

が嘘の様に、全く相手にもされなくなっていた。



「最近、皇女の差し入れが楽しみなんだよ」

「わかる。本当に昔の噂が嘘の様だよなぁ〜」

「それ、実はシグルド卿が流したデマだったんじゃ

 ないかって話知ってるか?」

「なんだよそれ?あれだけ優遇されてたってのに?」

「それが………だったらしいぜ?」

「まじかよ……最低だな…やっぱり貴族ってやつは」


噂は噂を呼び、いつの間にか、尾ひれ背びれがつい

た噂は一人歩きしていく。




お茶会で庇われたトート夫人は家に帰ってからも、

部屋で悩んでいた。


「一体どういう事かしら……あれは……庇ってくれ

 たのよね?だったら………」


あれだけの失態をしたというのに、噂にすらなって

いない。

それは、あの日皇女が口外を禁止したからに他なら

ない。


もし、お茶会の事が旦那に知られたらと思うと気が

気でなかったが、今は少し落ち着いてきた。


あの日以来メルシーには厳しくマナーを学ばせてい

る。


そして、もうすぐガゼルが王都を出るという話を

聞きつけたのだった。



その頃、フルール伯爵夫人も自室に息子を呼び出

していた。


「イクシルート、皇女様とはどうなのですか?」

「ティターニア皇女殿下ですか?どうと言われま

 しても……美しい人としか…」

「そうじゃないわ、仲がいいのか知りたいのよ、

 この前お茶会でも言われたのよ。うちの手がけ

 ているワイン事情に興味がお有りだとか…」

「あぁ、そう言えば……でも、私は伯爵といえど

 元は平民ですからね。気に入ってもらえるとは

 どうにも思えませんが……最近の皇女殿下は、

 身分を感じない振る舞いが多いですからね…」


イクシルートも薄々気づいていた。

昔のように平民嫌いだった態度が、かなり変わっ

てきているという事に。


それの最たるものが、今回のフルール訪問だった。


その同行に黒の騎士団が指名されたのだった。


イクシルート伯爵は身分的に申し分ない。

だが、妾の子供だったせいか養子となっている。


継母のデリアは厳しい人だったけれど、母親を亡く

したイクシルートに、しっかり愛情を注いでくれた

人でもあった。


「イクシルート、貴方まさか……」

「違いますって。多分、俺なんか気にされてもいま

 せんって」

「そう……そうよね。貴方もそろそろ身を固めても

 いい年よね?」

「そうっすね……あ、そうだ、そろそろ戻らないと」


言い訳みたいに付け加えると、出ていってしまう。


まだ遊び盛りのイクシルートには、夜会で仲良くな

ったご婦人との遊びで忙しいのだった。


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