知られてはいけない
お茶会は、見事ティターニア皇女の思惑通りに進
んだといえる。
伯爵夫人のデリア・フルールの許可を得て、実際
にフルール卿が治める領地へと下見に行く口実も
作る事ができた。
お茶会で騒ぎになった事は、誰もが口をつぐんだ
事で、大事にはならずに済んだ。
これは実際に言えば、トート夫人とフルール夫人
二人の名誉の為でもあった。
子供を亡くし、愛人の子供を引き取る。
聞こえはいいが、実際には屈辱的な事だった。
貴族では出来のいい子供を引き取り養子にする事
はよくある事ではあったが、実の子供の様に思え
るのかというとそれはまた、別の問題だった。
特に子供が健在なトート夫人にはそれは苦痛でし
かなかったのだろう。
皇女にガゼルのことを聞かれても、愚息としてし
かみられなかったからだ。
ティターニアの髪を整え終わるとメイド達が出て
行く。
代わりに入ってきたのはデボラとラジーナだった。
「皇女様、フルール領に行かれるというのは本当
ですか?」
「あそこはセイクリット公国の国境近くで、最近
まで小競り合いがあったとか…危険なのでは?」
「デボラ、ラジーナ、心配してくれてありがとう。
でも、大丈夫よ。騎士団をつけて貰うし、安全
よ?」
「ですが……それは黒の騎士団ですよね?やはり
今からでも考え直してはいかがですか?」
「そうですよ。せめて魔法の使えるヴォルフ卿か
ホエール卿にしては?」
白の騎士団率いるシグルド・ヴォルフか、王都の
安全を護る緑の騎士団セルシオ・ホエールを推し
たいらしい。
それは、ティターニアの意思に反する事だった。
せっかくガゼルとの旅だというのに、余計な者
など邪魔でしかない。
ましてや、ガゼルのライバル的存在など断固と
して一緒に行きたくなかった。
「黒の騎士団は本当に強くて安心なのよ?魔法
は使えずとも、とっても頼りになるんだから」
まるで夢見る少女の様にいうとティターニアの
眩しいくらいの笑顔に、二人とも口をつぐんだ。
そこへ、ルシアが入ってくると、二人はすぐに
退出していった。
「ティターニア様、ガゼル卿にはフルール領へ
行く事を伝えておきました。同行はガゼル卿
含め数名選りすぐるそうです」
「そう、ありがとう。ルシアも一緒に来てくれ
るかしら?」
「勿論です。どこまでもお供しますわ」
ルシアはすっかりティターニアの一番のお気に
入りになっていた。
どこに行くにも一緒で、魔法は使えない皇女と
思われていた。
ルシアの属性は闇魔法なので、誰かに知られる
わけにはいかない。
特に王族と懇意にする人なら尚更だった。




