主人公補正
マリアは晴れ渡った陽の下、神殿での毎日の祈り
を終えて宮殿の中を歩いていた。
そこで、真っ白な騎士服に身を包んだ、シグルド
を見つけた。
何やらため息を吐くと、眉間に皺をよせていた。
「シグルド様〜」
目一杯声を張り上げると、シグルドは振り向き驚
いたような顔でマリアを振り返った。
「どうしてここに?」
「シグルド様ったら、元気がないようでしたので」
そういうと、顔を近づける。
じっと目を見つめると瞳の奥にハートが映る。
「よし、今から気晴らしに行きましょう」
「そうですね。行きましょうか」
「やったー。では、手を取ってくれますか?」
「もちろんです」
手を差し出してくシグルドの手を取るとマリア
は嬉しそうにはしゃいだ。
そのまま庭園まで来るとベンチに腰掛けたのだ
った。
「悩みですか?」
「あぁ…父上の事だ。皇女に媚を売れと……で
すが俺は……」
「嫌なんですね?わかります。だって、すっご
く我儘ですもんね〜、いつも振り回されてい
たんでしょ?嫌にもなりますよね〜」
「それは……そうなのだが……」
どうにも煮え切らない。
『嫌いだ』そういえば済む事だ。
だが、今のシグルドはそこまで言い切れないよ
うだった。
「ティターニア皇女が嫌いなんですよね?」
「………あぁ……嫌いだったはずだ」
「私の目を見ていってください。嫌いですよね?」
「あぁ、大っ嫌いだ」
「ですよね〜。では、どうでもいいのでは?それ
に私、この前聖女として覚醒したんです」
じっと見つめ直すと、シグルドの決心が固まる。
そして、もうじき正式に発表される事をこっそり
と言ったのだった。
「それはめでたいじゃないか!」
「えぇ、それで……二人っきりで祝ってほしくて」
「もちろんだ。マリア、今日うちに来ないかい?
父上に紹介したいんだ。どうだろうか?」
「えぇ、勿論よ」
これで、公爵であるヴォルフ卿の許しが出れば婚約
となる。
その間にセルシオ卿の父にもこの間婚約の確約を取
たところだったのだった。
ほぼ全員の攻略対象を落とす事で開くフラグ。
それは、アルベルト皇太子とのフラグだった。
やり直し無しの、途中参加なのだから急ピッチで誘
惑しなくてはならなかった。
運良く、魅惑の魔眼があったおかげで順調に進んで
いる。
同じ転生者であり、ティターニア皇女に入っている
もう一人の味方は、ガゼル卿に夢中でこっちの邪魔
を一切してこないので、全く持って順調に進んでい
る。
「よし、あとはお茶会の後が楽しみだわ」
マリアの計画にはティターニアが首都から離れる必
要があったからだ。
それも、すぐに来るだろう。
他国の状況も、だんだん怪しくなってきている。
このゲームの戦闘シーンはあまり好きではなかった。
なぜならば、一つ間違えると簡単に仲間が死ぬから
だった。
ちゃんとフラグを回収して挑まないと、詰んで終わ
ってしまう。
何度もリセットなどできない。
そして、それに挑もうとする人がいるのなら、任せ
るに限る。
マリアは恋愛要素以外はてんで苦手だった。
あとはお茶会当日に静かに見守ればいいだけだと
気軽に考えると今日も好き勝手動いてぐっすり眠
ったのだった。




