買い物
街に出ると、付き添いには白の騎士団が同行して
きた。
本当なら、黒の騎士団に来て欲しいところだった
が、今から行くのはブティックが揃っている通り
で、そこは貴族達が行き交う場所だった。
そんなところへ連れ立つとしたら緑の騎士団のセ
ルシオ・ホエールか、白の騎士団のシグルド・ヴ
ォルフくらいだろう。
伯爵と公爵の違いはあるものの、高い位の貴族に
は変わりはないのだから。
馬車の窓に映る景色に、目を輝かせていたルシア
はティターニアには新鮮だった。
ティターニアにゴマをするでもなく、ただ憧れの
人を見るかのような視線。
この世界に来てから初めてだったかもしれない。
多少なりとも、この国にいれば皇女の悪い噂は耳
にするだろう。
だからこんなに純粋になんでも話してくるルシア
が羨ましかったのかもしれない。
「ルシアのドレスも見るといいわ」
「そんなっ……私は……それに今日はティターニア
様のドレスを見に来たのですわ」
「そうね、なら、私のドレスを選んでちょうだい。
代わりに私がルシアのドレスを選ぶわ。どうかし
ら?」
満面の笑みを浮かべながら提案すると、顔を真っ赤
にしながら頷いてくれた。
推しのガゼルも可愛いけど、ルシアも可愛いわ!
無口なガゼルも推せたけど、こんな純情そうな子、
可愛くて仕方がないのだった。
ティターニアを演じなくては行けないのだけれど
素の自分が出てしまう。
つい、ルシアの頭を撫でてしまうと、ハッとして
手を引っ込めたのだった。
「ティターニア……様……」
「あ、ごめんさない。ルシアがとても可愛いかっ
たので、つい……」
気まずそうにするティターニアに、ルシアは本当
に嬉しそうに微笑んだのだった。
「いえ、ティターニア様に撫でてもらえて嬉しい
ですわ」
本当に本心だと思える言葉だった。
闇魔法の使い手といえば策略家であったり、策士
だったりするのだが、ルシアはどれにも当てはま
らなかった。
「絶対に、私から離れないでね?」
「……?……はい」
こんな純粋な子を死なせたりはしたくない。
そう思うと、ティターニアのそばに置いておくの
が一番安全な気がした。
一国の皇女を守る為に多くの騎士が宮殿を護衛し
ている。
だから、余所者は簡単には入ってこれない。
ただ唯一気がかりなのは先日帰って行ったラシウス
・セイクリット、セイクリット公国の皇太子だ。
と言っても名ばかりで、息子が何人もいるので誰が
皇位継承権1位かと言われると、少し悩まざるを得な
い。
誰もが、同列なのだ。
年齢で決まるわけでもなく、これからやるであろう
実績で考慮されていくのだ。
妹を差し出して連絡係として皇女の側に置いたラシ
ウスは他の兄弟より一歩リードと行ったところだろ
う。
「国のゴタゴタは本当に迷惑よね……」
ティターニアはこれから起こるであろう災害を思う
と戦争などにうつつを抜かそうとする公国に浅はか
さを呪いたくなる。
確か、公国の側に影の尖兵が一気に湧いて、蹂躙
されたんだっけ?
記憶を辿っていると、あっという間にブティック
に着いたのだった。




