ティターニアの暴虐無人な行い
ティターニアが陛下と約束した黒の騎士団への移
動は、すでに終わっていた。
兄のアルベルトは帰って来てからは、もっぱら白
の騎士団と一緒に訓練をしていた。
最近ティターニアの姿は一切見かけない。
「シグルド、本当に飽きられたんだな…」
「アルベルト様、私は常日頃から皇女様とは何で
もないと申し上げておりました」
「だがな〜、うちの妹があれほどまでにお前に執
着していたのも珍しいというか……母が亡くな
ってからは特にな…」
「それは私の母に懐いていらしたからでしょう。
しかし、私は……」
「分かった、分かった。だが、お父上はそうは思
っていないかもしれんな」
「父上が………?」
シグルドが眉を顰めると、たまたま訓練を覗きに
来ていたのか、ヴォルフ公爵がシグルドをみて不
機嫌そうな顔で手招きしていた。
「父上、このようなところまでどうして……」
「シグルド、お前は何をやっているんだ!」
いきなり大声を上げると、何も身に覚えがないせ
いか少し驚いた。
「お前は…お前というやつは……分からんのか?」
「はい、間違った事をしておりません」
「全く、どうしてお前は…まぁいい。すぐに皇女
様にあって謝罪してこい。未来の皇帝だぞ?逃
してなるものか!」
ヴォルフ卿の言葉に、やっとアルベルトが言って
いた言葉に納得がいった。
さっきアルベルト殿下が言っていた言葉はそうい
う事だったのだ。
父が気にしていたのは体面だけで、息子の意見な
ど全く聞く気もないのだ。
息子の気持ちなどそもそも爵位の前では無いも等
しいらしい。
母が死んだ時も、葬儀に参列しなかった。
葬儀中、ずっと側にいたのはティターニアだけだ
った。
母の死を一番悔やみ、涙したのはティターニアだ
けだ。
どうして今思い出したのだろう。
埋葬して、親戚が帰っていくなか、ずっと側にい
て、日が暮れるまで墓の前から動けなかったシグ
ルドにずっと付き添っていた。
何かを話すわけでもなく、ただ側にいるだけだっ
た。
あの時は、まだ可愛かった。
だが、母が死んでからはシグルドに異様な執着を
見せるようになった。
騎士学校でも女性騎士見習いと話す事すら、許さ
なかった。
そのせいで、何人もの女性騎士が途中で辞めてい
った事か。
全てはシグルドと仲良さそうに話していた事が原
因だとされていた。
『どうして私が辞めなきゃいけないの?シグルド、
あなた、何を言ったのよ?』
『あなたと仲良くなりたいなんて思ってなかった
のに……あなたのせいよ……』
『シグルド、あなたは本当に何も知らないの?
全部誰のせいでこんな事が起きてるって気づい
てないふりでもしてるの?最低よ』
数々の言葉を残して去っていった友人達。
良かれと、手を差し伸べた相手からの恨みの言葉
はいつも理解できなかった。
多分、ティターニアがまた何かしたのだろう。
そう思っていた。
でも、実際は彼女達から近づいたわけではない。
それは見ている周りが一番知っている事であった。




