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隣国の皇子、皇女

こうして、とうとう隣国の使者が来る日になって

しまったのだった。


その日は快晴で、心地よい風が吹いていた。


天候にも恵まれ、花々が咲き乱れ一番いい時期で

もあった。


そんないい時期にカストラール帝国を訪れたのは

セイクリット公国のラシウス・セイクリットと、

その妹で、あまり公務には顔を出した事のないル

シア・セイクリットだった。


豪華な馬車は大通りを通り、城の正門へとたどり

着いた。


門を騎士達に護られる様に馬車を乗り換える。

城の中と言っても、門から城の入り口までは結構

な距離がある。

その為、小型の馬車に変えると窓も大きめの物に

した。


それは、丁度今、見頃の花々が咲き乱れる庭園の

真ん中を突っ切り様に走るからだった。


「お兄様、凄く綺麗……」

「落ち着きなさい。あまりはしゃぐんじゃないよ。

 今から大事な交渉が控えているのだから…」


妹のルシアと違い、ラシウスは落ち着きを払って

いた。

いや、警戒していたと言った方がいいかもしれな

かった。


今から、歓迎されるであろう言葉は、全部ただの

社交辞令に過ぎない。


ましてや、国と国との交渉事に関しては、訪問国

である、セイクリット公国が有利に働く事はあま

りないのだ。


ましてや、今から突きつけるのは祝い事ではある

のだが、必ずしも喜ばれる事ではない。


妹の嬉しそうな顔を見ながらラシウスは少し悩ま

しげに顔を歪めた。


「ルシア……アルベルト皇子をどう思う?」

「アルベルト様ですか?……とっても言い殿方で 

 すわ」


少し考えてから、ニッコリと微笑むと頬を赤らめ

ながら答えた。


多分、これがルシアの本音なのだろう。

素直でまっすぐに育ってきた子だ。


だからこそ、政略結婚などさせたくなかった。

だが、これも国の為。

そして、ゆくゆくは彼女の為でもあった。


景色は変わり入り口の前に馬車が止まった。


ドアが開くと、騎士が一斉に並んでいた。

真っ白な鎧を着ている姿は静観だ。


さっきまで門のところにいた騎士は緑の鎧に

包まれていた。

ここでは鎧の色によって分かれているのだろ

う。


ラシウスは降りると、ルシアに向けて手を差

し出した。

その手をしっかり掴むとルシアが馬車を降り

たのだった。


銀髪の騎士に案内される様に長い廊下を歩く。


「お兄様、あの騎士の方。すっごくかっこい

 いわ」

「ルシア、それを言ってはいけないよ。誰に

 対しても公平でなければならない。分かっ

 たかい?」

「はい、お兄様」


一瞬目を引いたのはシグルドの容姿にだろう。

パーティーでも淑女の視線の的になるくらい

紳士的で、まだ独り身なのが嘘の様だった。


それも、これも全てティターニアがいたせい

であったが、ルシアはそれを知る事はない。



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