隣国の訪問イベント
ティターニアは、庭園でのことを思い返していた。
あのシグルドの焦ったような顔。
あきらかにティターニアを牽制している様な態度。
普通だったら、それだけでも無礼極まりない態度
だった。
ティターニアには全く興味のない男だったのに、
どこか胸がズキリッと痛みだす。
きっと、ティターニア自身の痛みなのだろう。
ずっと報われない恋をして、ずっと我慢して。
それでも、必死に自分を見てと訴える哀れな少女。
「叶うはずもない恋なんて…あんたわかってたん
でしょ?」
自分を見る事もない男を追いかけるなんて。
前の彼女はそれだけ純愛だったのだろう。
だからこそ、彼に近づく女性が許せなかったのだろ
う。
同僚の女騎士でさえも、辞めさせて故郷に帰したと
あったが、本当はどうだったのだろう。
過激なこの想いはあまりに強すぎる。
「私は、自分の推しを応援させてもらうわ。悪いけ
ど、貴方の恋を叶える気はないわ」
自分自身に話しかけると、部屋で書き込んだノート
を広げた。
もうすぐ起こるイベント、それは隣国からの来賓を
迎える事だった。
このイベント中は部屋から出さない様にという陛下
の言葉に反抗したティターニアが人騒動起こすとい
うものだった。
今回は陛下の命によって、出席を許されていた。
したがって、面倒な来賓の男性との接触イベントは
起こらないだろうと推察できる。
そして数日後、アルベルト皇子を訪ねるかの様に、
隣国からの使者が来たのだった。
隣国から来るのはラシウス・セイクリットと、妹の
ルシア・セイクリットだった。
隣国はかなりの国土を広げ、この前も戦争に勝って
国土を広げたばかりだった。
だが、民心は不安定でまだしっかりと平定されては
いなかった。
そこに尽力したのが、アルベルト皇子だったのだ。
国も落ち着きを見せたので、改めてこのカストラー
ル帝国へと訪問する事にしたのだった。
「確か……ルシアとの婚姻を申し込む為でもあるの
よね〜確か……」
兄の皇子が普通なら帝位を継ぐと考えた隣国では、
この期に、政略結婚を推し進める予定だったのだ。
それをティターニア皇女の揉め事のせいで何もで
きずに帰るという流れだったのだ。
「ん?……あれ。待って、これって揉め事イベント
なかったら、アルベルトの正妻が決まるって事?」
想い返しても、そうならざるを得ない。
やっとティターニアの好感度も上がり、悪い噂も
払拭されつつあった。
こんな時に、奇行的な態度を取るのは絶対に避けた
かった。
ましてや、そんな揉め事などガゼルには知られたく
はなかった。




