怖いもの知らず
シグルドがアルベルトに呼ばれて行く途中で、マ
リアと偶然会う事になった。
「あっ!シグルド様、こんなところで会うなんて
奇遇ですね」
「あぁ、君は神殿にいるのではないのかい?」
「はい、いつもはそうなのですが、今日はちょっ
と気が滅入ってしまって。それでこちらに庭園
があると、前に言ってたじゃないですか?」
「だが、ここは皇族の為の庭園で……」
「ダメですか?シグルド様がここには季節ごとに
花が咲き乱れているって言っていたではないで
すかぁ〜」
「それは……」
ティターニアに連れられるように以前来ていたか
ら知っているだけだった。
毎年色とりどりの花を咲かせ、ティターニアの気
分次第で、民の税金で改装される事も多々あった。
最近では、シグルドが呼び出しに応じなかったせ
いもあり、全く見にくる事もなかった。
今日の様に横を通る事はあっても、そちらに視線
向ける事もなくなっていた。
遠征の時に、あまりにマリアが緊張していたので、
ここの事を話して聞かせたのだった。
まさか、それで見に来てしまうとは思わなかった。
もし、ティターニア皇女に見られようものなら、き
っとマリアは罰を与えられるだろう。
そうなっては、話したシグルドさえも巻き込まれか
ねない。
「わかったから、今日は帰りなさい」
「でも、まだ見てないわ。よかったらシグルド様も
一緒に行きませんか?」
「いや、今は忙しいから……」
そう言いながら帰らせる様に宥めていると、ふと視
線を感じた。
顔を上げると、こちらを見ている視線と目があった。
「あっ……」
一瞬、眉間に皺が寄ったが、すぐにマリアを後ろに
隠すようにして、目の前にきた女性に片膝を付く。
「ティターニア皇女様がおられるとは知らず……」
「何を揉めていたの?」
静かだけど、落ち着きをはらった言葉に、シグルド
は言葉を選ぶ。
すると、後ろにいたマリアが顔を出す。
「まぁ〜、綺麗な人!私はマリア。神殿に使える巫
女なの!今日はここの庭園を見に来たのよ?前に
シグルド様が素敵な庭園があるって話してくれた
のよ!」
全く無警戒で話し出すマリアにシグルドは気が気じ
ゃなかっただろう。
下を向いていても分かるくらい顔が真っ青になって
いる。
昔のティターニアだったら、即国外追放か、その場
で腕の一本でも切り落とすであろう事を知っている
からだった。
すると、ため息を吐くと意外な言葉が降ってきたの
だった。
「そう、なら存分に見て行くといいわ。マリアさん」
「はいっ!ありがとうございます。……あの、一緒
に見ませんか?シグルド様は忙しい様なので……」
「……一緒に?」
マリアの爆弾発言にシグルドはすぐに訂正した。
「大丈夫だよ。俺が案内しよう」
「まぁ〜嬉しい。」
皇女と二人きりになどできないと咄嗟に出た言葉だ
った。それが正しいのかはわからないが、確実な事
は、マリアが神殿に帰ってしまえば、ティターニア
には手を出せないという事だった。




