巣穴の魔物退治
ティターニア皇女を危険に晒す訳にはいかない。
ここに来る前に、皇帝陛下に言われた言葉だった。
もし、傷でも付けようものなら……。
この騎士団は解散の上、全員が生きていられるか
も怪しいほどになるだろう。
それほどまでに、彼女は危険分子なのだ。
ただの警護対象なら、それでもいい。
だが、自分から付いてくるような警護対象は一番
困る。
なんとか、荷馬車に引き止めると、ガゼルは部下
を連れて魔物の巣穴へと向かったのだった。
魔法で一気に潰す事はできないので、地道に一匹
づつ倒すしかない。
が、戦闘となれば音で何匹出てくるか分からない。
数が多ければ、それだけ危険になるのだ。
「どうする?団長…」
「そうだな……あれで行くか……」
「あぁ、そういえばこの辺にも生えてたな……」
「すぐに用意しろ」
「へいへい、任せときなって」
細かく説明などしなくても、こう言う自然が多い
場所にはそれなりに自生しているモノがある。
それを利用しない手はない。
「俺は松ぼっくりでも探してきましょうか?さっ
き松の木もありましたし」
「あぁ、少し多めに頼む」
「了解」
エミールは先行隊として先に行くことが多かった。
今は、ガゼルの考えに賛同して先に必要なモノを
進言したのだった。
滝のあった場所の少し手前に、多く転がっていた
のを思い出すと駆け出していた。
前の遠征で、ティターニア皇女が火をつける魔道
具を隊にいくつか寄付してくれた。
それを手に、洞窟の前には夾竹桃をどっさりと積
みあげてから、そこに幾つかの松ぼっくりを置く。
それに火をつけると、ゆっくり燃え始める。
そして、ボンッと音がして弾ける。
一緒に置かれた葉っぱが燃えると白い煙が出てい
く。
それは風向きで洞窟の中へと吹き込まれていく。
十分に充満したところで、音を立てた。
キンキンッと金属を叩いて音を立てると、中から
ゾロゾロとさっきと同じような体格の魔物が顔を
出したのだった。
「おいおい、どれだけいるんだよ?」
「穴の数よりは多いな…」
「そうだろうと思ったよ。団長、死んだら恨みま
すからね?」
「あぁ、だが…俺らがそう簡単に死ぬと思うか?」
「思いませんね。最後まで足掻くたちなんで」
「そうだろうな、だったら足掻け!」
そういうと、一斉に武器を握ると走り出したのだ
った。
魔物の動きは鈍い。
今なら殺れる!
木の上から弓を構えるエミールは一番手前のから
順番に急所を撃ち抜いていく。
片目を射ると次は別の個体の目を狙った。
勿論、暴れるようになるが、攻撃は単調になり避
けやすくなる。
一匹づつとどめをさしていくのは仲間の役目だっ
た。
最初に燃やしたのはこの辺に自生している植物の
葉っぱだった。
乾燥や、暑さ、大気汚染に強い植物で燃やすと毒
性を持つのだった。
燃えた煙を吸い続ければ毒に侵され、動きは鈍り
多数を相手にしても問題ないほど弱らせる事が出
来る。
燃やして煙りがきたくらいでは動物は早々出てこ
ない。
だから、よ〜く煙を吸ってから起こしたのだった。
多少の怪我人は出たものの、重症者は一人も居な
かった。




