不安感
インテルズ川の奥に方まできていた。
川の奥地には大きな滝があり、それを抜けるとい
くつもの洞窟がぽっかり空いている。
そこを根城にしているのがグリズリーと言う魔物
だった。
体調は2メートルほどで、大きな爪と牙、硬い体
毛に覆われている。
いわゆる熊の大きい奴である。
一体ならどうと言う事はない。
だが、もし群れだとなると、調査団を庇いながら
の戦闘は実に厳しいものとなる。
その為、あらかじめ離れた場所に荷馬車を置き、
騎士団だけで先に安全を確保する必要があった。
だが、護衛は数人置いておかねばならない。
一番人数の少ない騎士団である、ガゼル率いる
黒の騎士団は、少し荒っぽい人間が多い。
と言っても、最近ではティターニア皇女とは仲
良くしているせいか、自分が護衛をすると言い
出すしまつで、かっこいいところを見せたいと
言う人まで出てきたくらいだった。
「もういい、オルフェン、ビオーナ、お前ら残
れ、あとは俺につづけ!」
ガゼルが言うと、誰からも反論の声は上がらな
かった。
グリズリーの巣穴は10を超えている。
それを今から全部潰すと言っているのだった。
シグルドだったら魔法を巣穴にぶっ放して生き
埋めにすると言うだろうけど、ガゼルは違う。
魔法など使えないのだ。
真っ向から戦って倒すしかないのだ。
「待って、どれだけいるか分からないのよ?」
「分かってる。安全になったら呼びに来るから
ここでみんなと一緒にいるんだ。いいな?」
「なら……私も一緒に……」
「それはダメだ!訓練もしていない人間を連れ
ては行けない」
ガゼルはハッキリと言うと、ティターニアを置
いて行ってしまった。
分かってはいた事だった。
この調査は危険が伴うという事を。
そして、この先祭壇で起こる事も、一つ間違え
れば、必ず一人は死んでしまうかもしれない事
でもあった。
ぎゅっと手を握りしめると、何もできない自分
に苛立ちを募らせた。
「大丈夫ですよ。団長は強いですから」
横で、ビオーナがティターニアに寄り添うよう
にして立つと、何度も大丈夫だと言ったのだっ
た。
暫く待つ事、数時間。
今、どうなっているのだろう?
長いようで、実はまだそんなに経っていなかっ
たりするのだろうか?
いや…そんなはずはない。
上まできていた太陽が、もう反対側に傾き始め
ていたからだった。
「遅いですね……」
ティターニアがつぶやくと、調査団の連中は
ゴソゴソと機械の調整を行なっており、そち
らに夢中だったようで、時間が経つのを忘れ
ているようだった。
騎士団を心配しているのはティターニアと、
同じ騎士のオルフェンとビオーナだけだろう。
すると、奥からガサガサっと音がして、緊張
が走った。
オルフェンは剣に手をかけると、身構えた。
「こっちは問題ないか?」
「ガゼル団長!」
オルフェンはガゼルを見つけると、ホッとし
たのか息を吐くと緊張を緩めた。




