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絶景

眼前に現れたのは、のっそりとした動きでこちら

を警戒する少し小ぶりな熊だった。


ティターニアには熊のように見えた。


だが、このゲームで登場する熊は見た目通りでは

ない。


見た目は熊でも、勢いよく突進されれば、人間な

んてひとたまりもないのだ。


大きな牙や威嚇した時に毛を逆撫でする姿は、一

見可愛く見えるが、実際は獰猛なのだ。


ひとたび襲い掛かれば、仕留めるまで止まらない

と言う。


人間はこの魔物にとっては餌も同然なのだ。


これは隣国も同じだった。

頭を悩ませる一つの要因だった。


それともう一つは影の尖兵だ。


それは、どんなに強い魔物や動物でも、傷をつ

ければそこから体内に侵入して死に至らしめる。


そして影に包まれた真っ黒の存在に成り果てる

のだった。


「下がれっ、オルフェン達は馬車を、それ以外

 は俺に続け!」

「はっ」


取り囲むように配置し、鋭い爪が向かった先の

騎士は爪をいなして、反対側の騎士が攻撃を加

えたのだった。

それを繰り返し弱らせていく。


今は一体だから余裕があるが、群れだったらこ

うはいかないのだと後で話してくれたのだった。


無事、倒し終えると解体してから魔石を取り出す。

爪などは売れるので荷馬車の方に絡めて入れた。


ティターニアには手伝える事が少ないので怪我人

が出た時だけだ。


黒の騎士団員は非常に戦闘に長けていた。

そのせいかあまり無理な戦闘はせず、引き際を見

極めているせいか怪我がめっぽう少ない。


ガゼルが中心となって連携が取れているというの

もその要因だろう。


順調に進んでいくと、大きな水音が聞こえてきた。


眼下に見えるのは大きな滝だった。

さっき言っていた絶景だという景色だろう。


「すごーい……」


ポツリと溢した言葉に、横にいた声が重なる。


「ここは奴の住処の近くでなかったら、観光名所に

 なっていてもおかしくないですね…」

「えっ……ガゼル様っ」


横でした声の主を見て、ちょっぴり驚いた。


あまり何事にも関心がないとばかり思っていたので

ガゼルでも綺麗な景色は綺麗だと思うのかと嬉しか

った。


推しと同じものを見て、同じように感じる。

生きててよかったぁ〜。

いや、もう死んでるけど……。


「こういう景色は…好きな人と見ると、また違って

 感じますね?」


わざと、話かけるように言うと、少し不機嫌そうに

チラリと見てきた。


「そうですか?誰と見ても同じだと思いますが……

 目的の場所はすくそこですから、油断しないで下

 さい」

「はい……」


少し不機嫌だった?


さっきまでそんな感じはなかったのだが、一瞬眉間

に寄った皺が気になった。


「団長も素直じゃないですからね〜。皇女様は団長

 の事、気に入ってるんでしょ?」

「えっ……えぇーー!!」

「見てれば分かりますよ〜、もう、騎士団内じゃバ

 レバレですもん」


そんなに分かりやすかっただろうか?

オルフェンは揶揄うように笑うと真っ赤になって頬

に手を当てるティターニア見ながらニヤニヤしてき

たのだった。


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