純粋な眼差し
調査団の皆が朝から慌ただしく動き回っていた。
二日酔いのせいか頭痛が取れないティターニアはと
いうと、遠征の支度も終えて馬車の横にきていた。
「皇女様っ!昨日のパーティーはどうでしたか?」
「えぇ、ビオーナ…いつもと変わらないわ。退屈な
ままよ。ビオーナがいてくれたら違っていたかも
知れないわね?」
「いいな〜……あ、でも、私ドレス持ってないわ」
「そんな事いいのに…騎士団服も正装だもの…でも
もし、行きたいなら、ドレスを貸すわよ?」
「えぇ!いいんですか!皇女様と一緒に行きたい
です」
目を輝かせて言うビオーナにティターニアはクスッ
と笑った。
本当に裏表がない言葉にこんなに落ち着くとは思
わなかった。
「そうね…帰ってきたら一緒に行きましょう」
「わーい嬉しい〜!絶対ですよ!約束ですからね」
嬉しさのあまり声が大きくなる。
すると、後ろから『サボるな!』
とビオーナの頭を小突いていた。
誰かと、振り向くとビオーナは罰が悪そうに持ち
場に戻って行った。
後ろにいたのは騎士団長のガゼルだった。
「あっ……ガゼル様っ…」
「皇女様、昨日は飲み過ぎですよ。今日は馬車の
方でよかったですか?」
「え…あ、はい……ガゼル様は…」
「では、荷物が積み終わったらすぐに出発します」
「はい…」
なぜか、すごく素っ気ない気がするのは気のせい
だろうか?
少し、気を許せるようになったと思ったのだが、
最初の時に戻ってしまった気がする。
それでも、この推しは恥ずかしがり屋なので仕方
がない事だった。
うんうん、こう言うのも可愛いのよね〜。
まるで気まぐれな猫のようだといつもながら思っ
てしまう。
いつか、素直に笑えるようにしてあげたい。
ずっと一人で悩んでいた事を少しでも一緒に背負
ってあげたい。
そう、考えてしまうのだった。
今回は一人で馬に乗れとは言われなかった。
昨日飲みすぎたせいで馬に揺られるのは、少しき
ついと思っていた。
今回は馬車が通れる道をいくので荷物も馬車で運
ぶ事になっていた。
一部の平民の調査団員は馬が乗れない。
馬は貴族の嗜みと言われるほどに、当たり前の様
に乗っていたが、平民にはそもそも馬など与えら
れる機会などないのだ。
前は歩いてついてきていた調査団も、今回ばかり
は馬車に乗る事になっていた。
しっかり舗装された道を行くので魔物の襲撃も
いち早く見えて、対策も取れる。
前の遠征のように獣道ではない分、警戒もしや
すいのだそうだ。
休憩を挟みつつ、隣国の境界線辺りまで来ると
本当に辺りに村も見当たらないくらいに荒野が
辺り一面に広がっていた。
「何もないのね…」
「もうすぐゴツゴツした岩場に到着します。こ
の先に大きな川が流れており、その上流に大
きな滝があるんです。凄くいい景色ですよ」
「そうなのね。ぜひ見てみたいわね」
「目的地も近いので見えると思いますよ」
調査団の面々はよく地理も把握していた。
「ただ…もうすぐ、奴の縄張りなので気をつけ
ねばなりません」
「なるほど…熊のような大きな魔物ね」
「はい、体皮は硬く、爪は鋭い、そして何より
動きが素早い上に腕力は侮れないほど強いの
です」
「……」
騎士団と同じ認識らしく、緊張が走った。
この中には回復魔法が使えるのは皇女しかい
ないのだった。
「私が全力で治すわ!だから絶対に死なない
でくれればいいわ」
「全く、無茶を言う人だ……」
そんな会話をしている中で、警戒を促す笛が
鳴った。
ガゼルが前を警戒し、後ろにはオルフェンが
警戒に当たる。
二人のコンビネーションはなかなかだった。




