皇女の我儘
国家予算の他に皇女が使う小遣いも一緒に計上さ
れていた。
国の予算は全て民の税で賄われている。
貴族たちは自分の領地の領民から税をとってそれ
を国に収めているのだ。
したがって、建物の改築や、新規で建てるにはそ
れなりの手続きが必要なのだ。
だが、皇女の小遣いはそれとは別格に扱われる。
従って、皇女が寄宿舎を新しくすると言えば問答
無用に改築工事が始められる。
予算は勝手に計上され、後で足りない原因になる。
いつもの事なので、皇女の為の予算は多めに計算
されているので、多少は融通がきくのだった。
「今回はなんだ?」
「はい、皇女様が城内の観賞用森林を切って新
たに寄宿舎と訓練場を作ると言っておいでです」
「なに?またか?白の騎士団には立派な訓練場も
あるだろう?この前新しくしたばかりではない
か?」
「はい、その通りです」
王に進言するのは予算を担当している管理だった。
男爵の位を有し、貴族の末端の為か、強くは言え
なかった。
「また、娘は何を考えているのか……あの男にそ
れほどの価値などないというに……」
王は一人の父親としてヴォルフ家のシグルドを好
いてはいなかった。
シグルドは色男で、いつもティターニアを袖にし
ている。
ティターニアはそれでも、必死に自分をアピール
する為に、どんなことでもやった。
快適な生活をさせる為に寄宿舎を新しくして、訓
錬場も広くて使いやすくした。
更衣室に風呂場作りと快適な空間を作ろうと必死
だった。
どれだけお金をかければいいのか。
それでも全く振り向かない男にご執心なのだ。
「もう、あれはほかって置いてくれ。何を言って
も、諦めないからな……」
「ですが……いえ、なんでもありません」
白の騎士団ばかり優遇するせいで、他の騎士団へ
回るはずの予算が出てこないのだった。
それでも緑の騎士団は公爵、伯爵の次男三男達で
構成されている為、自分たちでなんとかなるのだ
が、黒の騎士団だけはそうもいかなかった。
平民出身の者がほとんどで、今にも壊れそうなほ
ど老朽化が進んだ場所での寝起きを強いられてい
るのだ。
何かと最前線へと送り込まれる黒の騎士団は人員
の補充もままならない。
それでも、ガゼルが団長になってからは被害も少
なくなった方だった。
元凄腕の傭兵とあってか、生き残る事に執心徹底
していたからだった。
その頃、ティターニアは新しく出来る宿舎と訓練
場を期待しながら部屋でのんびり紅茶を啜って待
っていたのだった。
横には取り巻きを置き、優雅なティータイムだ。
「ティターニア様、今日はどんなドレスで行くの
ですか?」
「そうね……この前届いたのがいいかしら〜」
「とてもお似合いですわ」
「そうですわ。今日はシグルド様をお誘いに行か
ないのですか?」
「行かないわ。だって、主役は私だもの!」
「それもそうですわね……」
「えぇ、ティターニア様だけでも、花があって、
騎士など必要ありませんわ」
自分の誕生日パーティーは今日も続くのだった。