調査団の派遣
皇女が帰った後で、調査関連の役職から貴族の姿
が消えたのだった。
勿論、業務に支障は全くない。
なぜなら貴族というだけで踏ん反り返り、仕事と
いう仕事をして居なかったのだ。
居なくなったとて、全く変わらない。
余計な口出しをしないだけスムーズに行える様に
なったと言っても過言ではない。
役に立たないから役職につけておけばいいという、
曖昧な立場が今までの腐敗に繋がっていたのだ。
これはゲームではお決まりの事だった。
ティターニアがそうと言えば、それが罷り通るの
にはこう言った背景があったのだろう。
だが、これからは違う。
しっかりした実力主義で役職を決めるべきなのだ。
国を動かす役職をも見直す必要があるのだが…。
そこには国の重役を担うには、やっぱり貴族でな
ければならないという先入観がまだ根強くあった。
平民の入る隙間などないのだ。
「人事はおいおい変えさせるとして…まずは次の
調査には私も同行出来る様にしなくちゃね…」
ティターニアは着替えると陛下の元へと向かった
のだった。
本来なら実の父とは言え、気軽に会いに行ってい
いものではないのだが、娘に甘い陛下ならすぐに
会ってくれる事だろう。
「陛下、ティターニア皇女様が面会を申し出て
おります」
「なにぃ!ティターニアが!すぐに通せっ」
「はぁ……では、こちらにお通ししますか?」
「いや、こんな場所ではなんだな……隣の部屋
にお茶と菓子を用意せよ」
「ただいま、お持ちします」
ティターニア皇女が通された隣室では、慌てて
お茶菓子と、ティーセットが用意されたのだっ
た。
「お父様、お願いがあります」
「遠征はさぞ疲れただろう。今日からはもう、
騎士団には行かなくていいぞ。それにもうす
ぐ、アルベルトが帰ってくるからな」
「アルベルトお兄様が?」
「そうだ。隣国が騒がしいとあってはおちおち
眠れぬからな。アルベルトの手腕もなかなか
じゃな。隣国の揉め事を無事解決したと連絡
が入ってのう。ついでに輸入品の関税も下が
るそうだぞ」
アルベルト・ルーウィン。
彼はこのカストラール帝国の第一皇子にして、
皇位継承権1位で、ティターニア皇女と同じく
金髪の見目のいい青年と思われていた。
シグルド・ヴォルフと同じ年の割に気がきく
性格で、少しお節介なところもある。
妹想いの兄……ではなかった。
何かと公務に追われ、妹の事は二の次だった
し、友人のシグルドに丸投げする節があった。
勿論、ティターニアにはそれでよかったのだ
が、当事者であるシグルドからしたら、断り
きれないから厄介な友人でもあった。
「お兄様が帰ってくるのですね………」
「そう、気落ちしなくてもいい。それでお願
いとはなんだ?言ってみなさい。なんでも
好きな物を買えるように……」
「はい、では…私をインテルズ川周辺の調査
に同行させて欲しいのです」
娘に甘い陛下はすぐに目を丸くして驚いたの
だった。
「何を言ってるんだ!遠征での疲れもあるだ
ろう?それにあそこは危険もあるし…」
「どうしても同行したいのです。いけません
か?」
「それは……まぁ白の騎士団のシグルド・ヴ
ォルフ卿が一緒なら、安心だが…」
「いえ、お父様。違いますわ。黒の騎士団が
行くことになって居ますわ。ですから…」
「なに!それは……あそこは荒くれ者が多い
と聞いているが……」
言葉に詰まると、あまりいい顔はしない。
「黒の騎士団の皆さんはとってもいい人達で
したわ。ですから、その力になりたいので
す」
涙ながらに説得した結果、渋々了承が出たの
だった。
これで古代の神物が手に入るチャンスを得た
と言えるのだった。




