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平民差別

マリアは今回の件で覚醒が遅くなりいまだに聖女

候補でしかないのだ。


「まぁ、いつかは覚醒するとして…今はでしゃば

 られる事もないわね」


ティターニアは一旦部屋を出る調査と解析を専門

に行っている部署へと足を運んだのだった。


部屋の中では騒がしく口論している声が外まで漏

れていた。


ドアの前に立っている兵士に声をかけると、すぐ

に中へと案内される。



「だから何度も言うが、ここは実績も信頼もある

 白の騎士団長のシグルド様に調査を任せた方が」

「いや、今回の功績は黒の騎士団長であるガゼル

 卿がいたからこそ、分かった事だろう?なら、

 次の調査団に同行するのはガゼル卿でもいいで

 はないか?」

「平民風情が出しゃばる事ではない!そう言えば

 其方も平民だったな……やっぱり平民を推すの

 はそれもあるのか?」

「なるほど、それでガゼル卿を推して居たのか?

 なんと浅はかな……」


風向きが悪い方に進みそうだった。

そんな矢先、いきなりの来訪者に全員の視線が集

まった。


「失礼するわよ。平民風情と聞こえたのだけれ

 ど?」


一礼すると、皇女の登場でまた空気が一変する。


「これは皇女殿下、この度の遠征で分かった事が

 ありまして…その追加調査の話の最中でして…」

「こほんっ………それで?続けなさい」

「えっ……あっ…はい。今回の調査で見知らぬ魔

 物が影の尖兵になって居た事からそれが黒死病

 の原因だという事が分かり、その魔物の生息域

 がインテルズ川の奥地と分かっており、調査団

 を派遣することになったというわけでして……」


チラチラと皇女へと視線を投げかけてくる意味は、

大体の予測はつく。


ティターニア皇女が無類の平民嫌いだったからだ。

だからこそ、ここで一言でも言ってくれれば、話

が思い通りの方向へ進むと考えたのだろう。


全く虎の威を借るなんたらとはよく言ったと思う。

本当にそんな奴がいるのかとティターニアは眉を

ひそめた。


「そうそう、皇女様もそう思いませんか?同じ平

 民だからと出しゃばるなど言語道断。皇女様が

 いたからこそ手柄を立てられたと言うのに、そ

 れ以上の功績を強請るとは……全く下賤の…」

「黙りなさい…!」


ティターニアの言葉に、一瞬で静かになった。


「平民?それのどこが悪いのですか?そもそも教

 養のない者がこの場にいるのですか?」


「……」

「……」

「そうですとも、そうですとも。今すぐに退出させ

 ましょう」


嬉々として貴族の端くれ達が喜ぶが、次の瞬間青ざ

める事となった。


「教養がなくても研究はできます。ですが、知識が

 あるにも関わらず、その程度の考えしかできない

 ような人には是非とも退出願うのが筋ではありま

 ぜんか?」

「はっ?」

「……」


一瞬で、その場の空浮が固まると、理解が追いつか

ないとでも言いたげだった。


あれほど嫌っていた平民を庇ったのだ。

それも、平民嫌いの筆頭である皇女がだ。


これには信じがたいと言う顔で見つめられたが、

そんな事は知った事ではなかった。


「聞こえなかったかしら?もう一度言わなければ

 ならないほど、耳が遠いのかしら?」


高圧的に言うと、その場のガゼル卿に反対してい

た貴族の三男や、金で実力もないのに入ってきた

者達は狼狽え俯くばかりだった。


「それで?遠征の騎士団は決まったのかしら?」

「ガゼル卿率いる黒の騎士団がいいかと……それ

 には理由もございます。さきの遠征での結果を

 踏まえた上で……」

「そうね、私もそう思うわ。では、そう進言しな

 さい。平民だろうと、実力があってこそよ」

「ありがとうございます、皇女殿下」


ガゼル卿を推していた平民出身者は予想外の皇女

の助言に最初は同様したが、今は喜び勇んででて

行ったのだった。

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