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ティターニアの思惑 2

どんなに思っても、きっと報われない。


誰かを想う気持ちなど持ってはならない。

なぜなら、騎士団は陛下に仕え、陛下の為に犠牲

になるのだから。


罷り間違っても陛下の大事な一人娘に怪我をさせ

るなど打首になってもおかしくない事だった。


だが、それを阻止したのは誰でもないティターニ

ア皇女だった。


ガゼルを庇うどころか、あろう事か村人を助けれ

たのもガゼルの指示によるものだと言ってのけた

のだった。


傭兵として暮らしてきたガゼルが騎士団に入る事

になった時、実の父親トート卿から会いにきた。


そして……『ガゼル大きくなったな…私の息子よ』


まるで見向きもしなかったのが嘘のように認知し

たのだった。




その日はたまたま街へと出たトート卿の長男が大

きな垂れ幕を見つけたのがきっかけだった。

それはかつて家の使用人をして居た女の息子だっ

た。


毎日態度や目つきが気に入らないと理由を付けて

は殴り、ぼろぼろなっていた気弱な少年だった。


今は騎士団長としてがっしりした体付きで、無愛

想な彼がなぜか笑顔で笑いかけているのだった。


「これは……一体どうなってる……」


トート卿長男はすぐに家に帰ると見た事を親に話

たのだった。


ガラスの割れる音がして、怒り任せな拳が机の上

に叩きつけられた。


「ガゼルめっ!せっかく男爵家に養子として迎え

 てやったものを………」

「あんな事して、目立ちたいのかよっ!親父、こ

 んなの許していいのかよ!うちの金であんな大

 きく広告を打つとは……」


誰もが、ガゼルの自作自演だと主張した。

だが、肝心のガゼル本人は未だに森の中にいたの

で、知る由もない。


ガゼルの父親は男爵の位を有している。

が、それは先代が貰った爵位であって、今の当主

が受け継いだに過ぎない。


したがって、このまま何もしなければ息子の代に

は爵位の返上もあり得るのだった。


「くっ……こんなはずでは……ガゼルの奴、恩を

 仇で返しやがって……」

「親父が甘やかすからつけ上がってるんだろ?

 うちの金を使わせるのはやめろよなっ!」

「そうよ、使用人の子供など認知するなんて」


息子と妻はトート卿を非難した。

だが、好きで認知したのではない。


騎士団長となれば、平民というわけにはいかない。

どこかから養子の話が出るだろう。

もし功績をあげようものなら、確実に家の爵位にも

関係してくるだろう。


そう思うと、早く認知してトート卿の立場を強固な

ものにする必要があったのだった。


ガゼルが家の金を使う事は絶対にできなかった。

それは、あらかじめ騎士団の給金も家に入れさせて

いるからだった。


もとより金を渡しては居ないのだ。

金を湯水のように使っている長男と妻は好き勝手言

ってはいるが、結局爵位を上げる為の貢献は一切し

ていないのだ。


ただ毎日を遊び呆けているだけだった。


「そういえばガゼルの騎士団にティターニア皇女様

 がいるんだろ?俺がお目に留まればいいんじゃ…」

「そうね、あなたならきっと気に入られるわね」

「そう簡単じゃ……いや、ガゼルを呼ぶぞ!」


トート卿は何かを思い付いたかのように腰を上げる

と使用人を呼びつけて居たのだった。

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