聖女の出現
遠征先は、各自決まっている。
それを決めたのはシグルド・ヴォルフ卿だ。
王都から一番近く、最近影の尖兵に襲われた街へ
行くのは白の騎士団と、一番有力な聖女候補だ。
そして、その先にある街へ行くのは緑の騎士団の
セルシオ・ホエール卿で、距離も少しある。
そして最後に黒の騎士団は山1つ先の集落へ遠征
が決まっている。
そこは聖女候補もいないが、被害も早々ないと
予想されていた。
川が近くを流れているので、水の心配もいらない。
なぜなら、山の湧き水が川となって生活用水とし
て活用されており、その川沿いにそって向かうの
で、食料の中でも一番重いと言われる水が入らな
いというだ。
その為、野営地も比較的川沿いに寝泊まりする事
で、水には困らないのだった。
「それにしても、どうして黒の騎士団ばかり遠征
場所が遠いのよ…」
「仕方ないですよ〜、だってうちの団長って、シ
グルド・ヴォルフ卿に嫌われてますからね〜」
「そうなの?」
「えぇ、あの人、貴族の間ではモテるけど、結局
は貴族主義ですからね。うちみたいな平民ばか
りで腕が立つってのは気に入らないんですよ」
ビオーナはあまりシグルドが好きではないようだ。
「そうね、それは私も思うわ」
「ですよね!うちの団長、平民って言っても顔は
いいでしょ?無口で無愛想なのはアレですけど」
「そうね、でも……それでもちゃんと助けてくれ
て実力はあるんでしょ?」
「もちろんですよ〜」
ゲームで知っているので、ティターニアが一番詳
しく知っていると言っていいだろう。
正義感があって、誰よりも人情に熱い事を……。
チラリと見える白の騎士団の荷馬車には見覚えの
ある顔が見えた。
「あれは……マリア……?」
「あぁ、聖女候補ですね。珍しく一番力があるそ
うですよ。でも……問題は平民の娘らしいです」
「そう……」
「でも、一番実力があるからって白の騎士団の同
行を許されたとか…、まぁ、どーせ地位狙いだ
ろうけど…」
まだ、出会わないと思っていたのだが、もうマリ
アは存在していたという事だろう。
なら、極力マリアには近づかない方がいいだろう。
誰もがマリアに惚れて、従ってしまうからだ。
これはゲームの時からの仕様だった。
攻略キャラじゃないガゼル・トート卿だけは問題
ないはずだ。
なぜなら彼は男爵という地位はあっても元平民だ
からだ。
妾の子であるガゼルはそもそも貴族にはなれなか
った。
しかし、騎士団に選ばれた事で実家であるトート
家がガゼルを自分の子であると認知したのだ。
男爵という爵位は平民に毛が生えただけの仮初の
産物だ。
一代で築いた功績によって授与され、その後2代
に渡って何も功績を上げられなければすぐに返上
されるからだった。
ガゼルは死んで子爵の地位につく事になるが、そ
れは功績とはいえない。
生きていて、爵位を受け取らなければ何の意味も
ないのだ。
推しの未来は絶対に護る。
そう心に誓うとティターニアはオルフェンが持っ
てきてくれた馬に跨った。
「準備はいいか?」
「はい……団長いつでもいけます」
ガゼルの声に数人が声をあげる。
「では、出発する!」
「「はい」」
一番先に出発した白の騎士団を追うように今、遠征
へと出発したのだった。




