出発の時
ティターニア皇女は遠征に随行するにあたって服
を新調していた。
いつもならドレスで過ごしていたが、馬に乗った
り野営したりするとなるとスカートでは動きにく
いのだった。
それに変わるような服が必要なのだ。
「皇女様、これはいかがですか?短いスカートに
フリルをあしらったデザインがとても素敵です」
「こちらはいかがです?タイトなラインが自慢の
デザインなだけあって、皇女様にお似合いです
わ」
デボラとラジーナは好き勝手言っているが、実際
問題、動きやすい服がいいのだ。
「これでは動きにくいでしょ?できれば寒さも凌
げるようなデザインがいいのだけれど…いっそ
男性のようなズボンにしていただけないかしら」
「それでは皇女様の美しさが……」
「私が着ればなんでも似合うと思うわない?どう
かしら?デボラ?ラジーナ?」
ティターニアは見た目だけなら絶世の美女なのだ。
我儘、暴言さえ吐かなければ、引くて数多なのだ。
それが、残念皇女と言われ続けた所以だった。
そして、下をズボンにする代わりに、上の服には
目一杯のフリルをあしらうと宝石で散りばめたよ
うな飾りがつけられていた。
これが精一杯の派手さ加減なのだろう。
そもそもティターニア皇女は派手好きな人だった。
だからデザイナーもそのように気を使うのだろう。
まぁ、動きやすければ問題はなかった。
あとは薄い金属のシートを作らせると、人数分受
け取ってきた。
それをポンチョのような形の布の裏に縫い付けて
貰う。
野営時の寒さを防ぎ、体温を保つ為のものだった。
黒の騎士団員はそう多くないので用意もなんとか
間に合った。
こうして、遠征当日を迎えたのだった。
「おはようございます。騎士団の皆さん」
ニッコリと笑うと、騎士団員からの視線を集めた。
「皇女様ですよね!新しい武器、ありがとうご
ざいます。すっごく使いやすいです」
女騎士のビオーナはすぐに皇女に駆け寄るとお礼
を言った。
そんな姿をじっと眺める騎士団がいた。
いつもの皇女なら、真っ先に白の騎士団の馬車の
前に立ち塞がり、差し入れなど色々と手を尽くし
てくれていた。
だが。今回は全く見向きもせず、黙々と荷物を運
んでいた。
「そういえば皇女様の荷物はどこですか?」
「あぁ、それならこれです」
「えっ……それだけですか?」
「えぇ、そうよ」
そう、市場に行った後にマジックバッグも買って
おいたのだった。
これには自分の魔力量に応じて荷物がはいるよう
になっており、多くの魔力を持っているティター
ニアには使いかってのいい物だった。
「皇女様は馬は乗れますか?それとも団長と?」
「乗れますわ」
「では、おとなしい馬を用意しておきますね」
「えぇ、ありがとう。」
ビオーナはよっぽどティターニア皇女が気に入っ
たようだった。




