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最強の武器

今、ガゼルの手の中にある剣が脈撃ったのを感じた。


「これは……一体…」


『……を捧げよ……使用者の代価を……捧げよ』


おぞましい声が響き渡った。


「一体何を……」

「代価は私よ。よーく聞きなさい。そして、その手

 を放しなさいっ!」


凛とした声に、ハッとして顔を上げた。

真剣な顔のティターニア皇女の姿に、気圧されるほ

ど美しく感じたのだった。


『そうか……なら、すぐに差し出せ……其方の魂を』


一瞬耳を疑った。

今、なんと言ったのだろう。


ガゼルの手から離れた剣は今ティターニアの元にあ

る。


魂を捧げる?それは一体どういう……。


「待ってくれ……ティターニア様、それは一体……」

「これはかつて勇者が使っていた剣なのです。切れ

 ぬものなどない程、強く残忍な剣。使用者の魂を

 糧として捧げる事で、魔王おも滅ぼせたと言われ

 ているのです。シグルドは知って居たはずです」

「それでは……それを俺に託した理由は……」

「……」


にっこりと微笑むと、ティターニアは剣を握りしめ

た。


「魂なら私のをあげるわ。だから満足しなさいよ」


『魂が二つある人間とは珍しい……いいだろう、一

 つ頂いて行こう』


そういうと、すうっと何かが身体から抜けていく気

がしたのだった。


倒れ、傾く身体をガゼルは咄嗟に抱き留めたのだっ

た。


「皇女様……ティターニア様っ!そんな……」


自分のせいで、ティターニア皇女を死なせた?

そう思うと、胸が苦しくなった。


いっそ、自分が死んだ方がよかった。

彼女を犠牲にしてまで生きて居たくはない。

騎士たるもの、主を護れずしてなんとする?


悔しさから、涙が溢れ出てくる。

ティターニアの頬を濡らすと、ゆっくり瞳が開い

たのだった。


「……っ……」

「ガゼル……様?どうして泣いてらっしゃるの?」


呆然としたようなティターニアの表情に、ガゼル

は驚きを隠せなかった。


「魂を捧げたって……」

「えぇ、私の中のもう一人の魂を持って行ったみ 

 たいね。ガゼル様、私達助かったのね。生きて

 いるのね」

「はい……ティターニア様のおかげです」

「よかったわ。貴方を生かす事が、私の望みだっ

 たのよ?生きているだけで偉いの。これからも

 私のそばにいてくれるかしら?」

「はい……あっ……えっと……//////」


すぐに即答したガゼルは、咄嗟に自分の今言った

言葉を思い出し赤面したのだった。


二人で洞窟を出ると、夕陽が綺麗だった。


みんなと合流した時には、もうどこにも影の尖兵

は見当たらなかった。


あの鎧武者は何だったのか?


最強の武器は、決して使ってはいけないものだった。

こんなもの、あってはならない。


最強であっても、その分誰かの犠牲の上に立つもの

など、決して許されないからだった。

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