建国祭
建国祭、それに合わせるように騎士団の中でも
一部の貴族はダンスの練習に余念がなかった。
今回の建国祭は隣国の訃報もあってか少し質素
になると言われていた。
が、実際は街の出店や、屋台は多くの人で賑わ
う事になるだろう。
そんな中、街の警護をしていたガゼルの元に1通
の辞令が届いた。
それは、セイクリット公国への遠征に白の騎士
団が行く事が決まったと言うものだった。
あきらかに、裏で操作されていそうなものだが
、それでも少しでも隣国の助けになるのなら、
誰が行っても構わなかった。
「隣国は大変ですね〜」
横から覗き見たビオーナが言うと、他の騎士達
はさほど興味がないようだった。
「団長は隣国に知り合いでも?」
「いや……母の出身国だと聞いた事があってな」
「そうなんですか?なら、心配ですね〜。私な
んか、両親の顔すら知らないですよ〜」
傭兵になるような人々は、自分の出自など知ら
ない場合が多い。
戦争孤児や、魔物に両親を殺され生き残ったな
ど色々な理由があり、生きていくのに精一杯で、
周りに気を使うような余裕はないのだ。
ガゼルとて、変わらない。
家を出てからは母親の死を悲しいんでいる余裕
はなかった。
生きる為に盗みもしたし、何度捕まってボコボ
コにされた事か……数えきれないほどだった。
そんな自分が今では国を護る騎士団の一員など
昔の自分からは信じられない事だった。
たまたま拾ってくれた人が、騎士団の団長で、
その人から色々と学んだ。
読み書きは母から教えて貰っていたので、その
他の作法や、騎士のマナー。
いらないとずっと言っていたが、ダンスも教え
られた。
伯爵の3男で、家を相続できず騎士になったと
言っていた。
結局、魔物の討伐辞令の時に命を落としてしま
ったが、ガゼルにとっては、父親のような人だ
った。
建国祭に向けて、久しぶりに服を新調した。
警邏を終えて、騎士団の訓練場に向かう途中で
ティターニア皇女とそこ横にいるイクシルート
を見つけた。
ガゼルが隠れる必要などないのだが、つい隠れて
しまった。
今更出ていくのは恥ずかしい。
つい聞き耳を立ててしまい、そんな自分に驚きを
隠せなかった。
「な…何をしているんだ……俺は」
遠くで、声が聞こえてきていた。
「建国祭の時のパートナーとして一緒に入場して
いただけませんか?ご無理でしたら……」
「えぇ、構わないわ。イクシルート様、エスコー
ト、是非お願いしますね」
「はい、ぜひ!時間の前にお迎えにあがります」
「はい」
二人の会話に、隠れていたガゼルは何も言えなか
った。
自分も……。
いや、それは無理だろう。
イクシルートは伯爵で、自分は最近子爵になった
ばかりの元平民なのだ。
身分など関係ない……
そう言ってくれた皇女を思い出しながら、その場
から動けなかった。




