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私の推し

佐々木希28歳。

毎日が残業続きのブラック企業に勤めているどこ

にでもいるようなOLである。


最近ハマっているゲームがあって、そこに出てく

るキャラに貢ぐ事二年。


唯一の癒しである。


どんなに上司に愚痴を言われようと、帰って彼の

顔を見るとすっごく癒されるのだ。


このゲームは発売されてからもうすぐ追加コンテ

ンツが出ると噂されており、それを楽しみにして

いる。


物語りの最期は必ず推しが死んでしまうのだが、

それまでは健気に頑張る姿を見るのが好きで何周

も繰り返しやっていた。


3周目で隠れエピソードを見つけて以来、もしか

したら推しが死なないルートがあるのではないか

と毎日やっているのだ。


今日も上司のミスの訂正に4時間もかけられ、残

業代もなしで居残るはめになった。


「はぁ〜、もういや……早く家帰ってガゼルに会

 いたいよう」


やり込み度で言えば、きっと一番多いと自分でも

思う。

それほどまでに、このゲームキャラである、黒髪

の青年に、入れ込んでいるのだ。

そう、ガゼル・トート。


黒の騎士団団長。

平民出身の苦労人で、実力だけで騎士となった異

例の人物。


口数は少なく、ぶっきらぼうだが負けず嫌いな所

が可愛くて、ガゼルのグッズは必ずゲットした。


あまり人気がないのか、そこまで苦労はしなかっ

た。


「ほんと、世の中の人間は見る目がないわね。ガ

 ゼルの魅力に気づかないなんて…」


最後にガゼルが死んでから、少しずつ見直されネ

ットでも、ガゼル推しが増えてきたが、それでも

主役にはかなわなかった。


主役は白の騎士団の団長で、シルバーブロンドの

髪に紫の瞳を持つ美男子だった。


いつもガゼルの功績を曇らせる存在で、英雄の名

を欲しいままにした人物だった。


皇女から付き纏われ、聖女と結ばれる運命だ。


ゲームの主人公は聖女マリア。

彼女の視点から始まる。


だからどうしてもガゼルが出てくる時は、必ず邪魔

な主役の存在が大きく出てしまう。


「ガゼルが主人公の物語はないのかしらね……」


家に帰ると、時計の針は12時を過ぎていた。


6時には起きなければならない。

だが、今癒されなければきっとガゼル不足で死んで

しまう。


それほど現代社会での癒しとは必要不可欠なものな

のだった。


「さぁ、シャワー浴びてからガゼルを堪能しよっと」


立ち上がると弁当を机に置いたまま脱衣所へと行く。

昨日も睡眠をあまり取っていないので、今日も足元

がフラフラと揺れる。


それもいつもの事。

そう思いながら風呂に浸かった。


「あ〜生き返るわぁ〜」


そんな折、いきなり視界が揺らぐ。


「ん?地震かな?」


ドンっと大きな揺れが来て、慌てて風呂から出よう

とするがいきなり電気が消えて手探り状態になる。


「嘘でしょ……こんな時に……」


文句を言っても仕方がない。

湯船から出ると、一瞬何かを踏んだ気がした。

つるっと滑ると真っ暗なまま身体に衝撃が走った。


そこでプツリと思考が止まったのだった。



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