9話
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ジャングルの秘境には古代文明の遺跡がある。
これはわりと定番ネタらしい。ことここ異世界においては・・・。もちろん前世の世界とは異なる文明の発展をしていた。
だがそれによって古代文明の調査が遅れているという訳もなかった。もちろんここのラスティワカン宮殿も調査はされ、お宝の発掘などは粗方終えた後だそうだ。
また、宮殿の奥の下へと降りる階段がダンジョンへと繋がっており、底から先は地下ダンジョンへと繋がっているそうだ。
そこにはまだ未調査のエリアが多数存在する。資源もたくさんあり、金策にはなるそうなのだが、魔力を狂わす邪気が発せられている場所や、とんでもない怪物がウジャウジャいるので、よっぽど追い詰められた国家の最後の手段らしい。
歴史的な飢饉の際には国民の生活のために国家の存亡をかけて、戦うのだとか。
今までいくつもの国家が挑み、時には巨万の富を得て、時には滅亡をしてきたという。
「ですから、私たちの国のことわざでまるで不可能に挑むことを”地下ダンジョンに挑もうとするようなものだ”というものがあるんです。」
「そんなバカな事には首を突っ込みたくないですね。命がいくつあってもたりないですよ。所でどうしてここに!?」
「それはですねえ。この宮殿の通路のそうそうこの辺りに、魔素が漏れ出てできた時雨雪草が時々生えているそうなんですよ。ほらあった。きれいですね~!」
「お父さまからお聞きしていたんですか?」
「そうなんです! 時々お土産で私もいくつか貰いました。高級回復薬の原料にもなる品物でして!」
「補助機。周囲のマップを確認して。」
【認識疎外を検知。磁気を帯びた魔力。ソナーを当てた所、とてつもない広い空間を確認。未探索地帯だと思われる】
最新テクノロジーでも観測出来ないのか。異世界ってぱねえ。
石の隙間で作られた窓から森林の風が流れ込んでくる。それは甘い花のようなみずみずしい新緑のような香りがした。
チチチチチッ。小鳥が宮殿内に入り込み、石畳をかける。
「ところで、そろそろ時間があいたから良いですか~?」
「はああ・・・。問題、ない。」
バックに時雨雪草を採集し終えたミスリーさんがNEMESSISちゃんにまた抱きついている。
いや。どんだけ好きなのこのエルフ。
もしや今日だけで何回も抱きつかれているので、免疫がついたのだろうか。アンドロイドはちょっとめんどくさそうな顔をしてあしらっていた。
「そんな~。前みたいにデレデレしなくなってお姉さんは悲しいですー。(号泣)」
「シンさん信じられますか? なんて事・・・。ヨヨヨ・・・。」
ええ。このちょっとポンコツに見えてこない事もないエルフがおれにしょっちゅう絡んでくるんだが!?
やれやれだぜ!?
「機械も成長するんですねえ~。あ、なんか雨が降ってきそう!?」
【報告。5分後に小雨。この森林一帯を包み込む恐れあり。雨宿りを推奨】
ものの見事に予報は当たった。天気はすぐに崩れ、屋根に雨音が鳴り響き始めた。
「あらら。困ったわ。すぐに帰るのは無理そうね。」
「では始めましょうか!」
【録画開始。題名:フューチャー・ウエディング】
「了。当機も観測をする。」と目の照準をおれたち二人に当てるNEMESSISさん。
「さあ。ここに来て下さい。シンさん!?」
「・・・。何をなさる気ですか?」
「私に愛の言葉を伝えるのです! 私の今のシンさんへの好感度が62%といったところでしょうか。鉄は熱いうちに打てと言いますよね! お熱い熱烈な口説きを閉じ込められた逃れられない空間で囁かれてしますと・・・。爆あがりするかもしれませんよ!?」
あーめんどくさ。この色ボケエルフめ~。何でおれが・・・。まあ良いか! なんか楽しそうなのでとびっきりふざけて照れさせてやり込める事にした。
「ミスリーさん、ここは静かだね・・・。」
「!? そうですね?」
「こういう時に、いつも思っていてなかなか伝えられない事を言うのは卑怯だろうか?」
「ピヒャッ!? そ、そんな近くに・・・!」
「おれはこのチャンスを逃したくない・・・。(そっと手をとった)」
「!”!! ummmmmmmm!(声にならない声)」
「これが私の気持ちだ。どうか受け取ってくれないだろうか?」
予めNEMESSISさんに頼んでいた、半重力収集機能でおれの差し出した手に近場にある花たちが均等の長さに整えられて大きな花束となった。
色の対比が素晴らしい。ラベンダーやエンジェルハートなどの花の蜜の香りが2人を包み込んだ。
サッと片手を上げる。スポットライトがおれに当たった。
「ミスリーさん。君を・・・。愛している。」
「ひゃい。ありがとうございます!(照れ顔)」
ふふふ。どうだ。まるで舞台のようだろう! さあ美しい天使の讃美歌がおれたちを応援しているようだった!
よっし。やり込めてやったぜ! いえい! 密かにガッツポーズをするおれと自分で頼んでおきながらとても幸せそうな顔をしたミスリーさんがいた。
「!!! 今のはっ。すっごく良かったです!」
「お気に召したようで何より。」
「(勇者との)恋はもっと本能に迫るもの良いとおもっておりましたけど。こう言うのも良いですねえ!」
「でも。これが本心だったらもっと嬉しかったのですが・・・。」
ええー。それ言っちゃう感じ?
「いえ。シンさんは私の事友達くらいの好きなので、無茶言っているのは分かるのですが・・・。そうじゃない気がするんです。」
うん。うん!? どう言うことだ?
「シンさんはきっと。人の事を本気で愛したことがないですよね!?」
「どうなんでしょうね。でも、もしかするとそうなのかもしれませんね。」
それはきっと・・・。
「それはきっと・・・。シンさんがシンさん自身を好きになれてないからだと思います! 人を得て満たされる恋は寂しいですよ? もっと自分の事を好きになって・・・。今の言葉を紡がれると・・・。私はヤバかったかもしれませんね!」
満面の笑みで何を言っているのだ!? このエルフ。
ごめん。ミスリーさん。君はおれのことを好きでないと言っているが・・・。それでもおれの事をそんなに見てくれていたのか。
自分の心の声を言い当てられたようで・・・。でも不思議と反発する気持ちがわかなかった。
こんなにも正論をぶつけられているのに。ミスリーさんに誰かにそっと優しく伝えて欲しいとどこかで思ってしまっていたのかもしれない。
「ああ。では・・・。おれの気持ちをもっとミスリーさんに伝えて行こうかな? 覚悟していて下さいよ? 本気のおれは熱いですから!」
「楽しみに待っていますね。(耳の先まで真っ赤)」
フフッ。この子本当は純粋な乙女なんだろうな。いいじゃないか。よし。本気でエルフをミスリーさんを口説く事にする。
覚悟を決めてもらおうか!




