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3話

エルフの村は元の世界とだいぶ違うようです♪

「どうだ、そろそろ慣れて来たか?」


お父さまが尋ねてきた。もうここに滞在して1週間になる。


「はい。もう本当にお世話になっております。この恩は一生かけてでも返させて頂きます!」


「ハハハ。君はまじめだな。ところで、体調が元に戻り次第手伝ってもらっていたわけだが。私たちこそ客人に失礼をした。」


「そんな事ないですよ。私ができる事なら何でも仰って下さい。」


「君は気立ての良い若者だ。ところで、今日は皆仕事が休みである。私が案内しても良いのだが、なにぶん最近腰の調子がいまいちでな。」


「あら。いやだわ。あなた。」


頬をかすかに赤く染めたお母さま。


「お、おい。脱線させないでくれ。ゴホンッ。というわけだ。ヴィオラッテとトーニーは最近婚約が決まって相手に悪いからな。そうだ。リー、村の案内を頼めるか。」


「分かりましたわ。お父さま。」


「そんな。気をつかって頂かなくても。ミスリーさんに悪いです。せっかくの休日を。」


「それより、右も左も分からない人がいる方が問題よ。とにかく、私は放っておけないわ。」


キリッとイケメン発言をするミスリーさん。なんて良い子なんだ♪


「ではお言葉に甘えて。よろしくお願いします。」


「はい。お願いされました。」


「行ってらっしゃい。気を付けてね。」


お綺麗なお姉さまのトーニーさんとヴィオラッテさんが送り出してくれた。


「ごめんなさいね。待たせたかしら。」

「いいえ。とんでもないです。それにしてもこの村はとても美しいですね。」


「ええ。私たちの自慢なの。世界中にあるエルフの里の中でも絶景よ。この村を参考に都市計画をされているのも少なくないわ。」


ニコニコと楽しそうに雑学を披露してくれた。人間もエルフも自分の好きなものの話をするときに幸せそうな表情をするのは共通しているようだ。


「ここから3軒先の建物で生活必需品はだいたいそろいます。お店のおじ様はとても親切で時々おまけもしてくれますの。」


「おじ様こんにちは。」


ニコリと笑い涼し気に手を振った。


「おお。リーちゃん。今日も元気だね。おやその隣の方は?」

「初めまして。シンと申します。」


「今我が家でお手伝いをしてもらっています。」


「本当にお世話になっております。」


「村長一家はみんな親切だからの。それに美男美女ぞろいときた。」


「はい。ミスリーさんも皆さまも大変お綺麗です。」


「そうじゃろう。フォッフォッフォ。外界のものたちはエルフはみんな顔が良いとか、やれスタイルが良いとか勝手にほざきよるが、彼らは特別じゃよ。」


「もう。おじ様ったら。恥ずかしいので、止めて下さいませ。」


もじもじするミスリーさん可愛い。唐突にもきゅんきゅんしてしまった。地面を意味もなく足で円をかいて気分を落ち着かせる。


おい。春風。ミスリーさんの髪を軽やかに揺らさないで。もう可愛いが止まらない。


「おっと新しいお客さんだ。すまんがまた今度ゆっくりな。後注文の分は夕方頃届きそうだ。また来てくれ。良かったら、息子にもって行かせるが。」


「大丈夫です。お忙しいでしょうから、また取りに来ます。」


「そうか。悪いね。」


「では、今度はこの村でとっておきの秘境に案内しますね!」


くるりと振り向きながらにこやかに笑みを浮かべた彼女の破壊力はそりゃあ凄かった。


振り向き美人とは良く言ったものだ。


「はい。お願いします。」


ふんふんふふーん。鼻歌を鳴らしながら彼女は先頭を張り切って突き進んでいる。


「シンさん。まだ行けそうですか?」

「はい。どこもかしこも綺麗な街並みで圧倒されていました。」


「そうですか? この辺りだとそんなに特色はないかもしれませんが。」


「真っ白な美しい大理石の家の壁や屋根に咲き誇る花の数々。本当に圧倒されています。」


クスクスと彼女は微笑むと、丁寧に説明してくれた。


「エルフは各家庭に家紋がありまして。花や植物をモチーフにしているんです。」


「例えば、あそこの家は紫のブーゲンビリア。向こうはペチュニア、その隣はヒューケラですねエルフ族はみんな植物とともに生きているのです。」


「通りで心の綺麗な方が多いわけですね。」


「そんな事はないですよ。人族と同じく人それぞれですから。昔はエルフにあらずんば知性があらずなんて言葉もあったくらいです。まあ過去の話ですが。昔は大変傲慢で閉鎖的な種族だったので、今でもエルフは外界に嫌われいる事もあります。」


そう言って寂しそう苦笑した。それでもミスリーさんは可愛い。


そうこれが儚げ美女・・・。うおおおお。正気に戻れおれ。


頬を右左と平手打ちをしてようやく意識がクリアになった。


「ど、どうしたんですか。シンさま?」


「虫に刺されたかも。」


そう言ってごまかして頬をさすった。


「まあ。大変。」


そう言っていそいそと掛けカバンからお薬を取り出したミスリーさんはおれの頬にピトッとふれた。


「この辺ですか? このお薬は大変良く聞くので、もう大丈夫です。」


フンスっとばかりにドヤ顔をしてきた。


その時のおれの心情は言うまでもないだろう。


「ハッ。ごめんなさい。つい家族と同じ接し方を・・・。」


急に照れだした。


「いえいえ。お気遣いいただきありがとうございます。」


おれは何とかお礼の言葉を絞り出す。大丈夫だ動揺しているのはばれていない。


「で、では。先を急ぎますよ!?」


「はい!」


彼女が高らかな指笛を鳴らすと、トラックのような大きな狼が路地の向こう側からぬうっと姿を現した。


ふさふさの尻尾が3本ほどあり何とも神々しい真っ白な毛並みを纏っている。


「おお? これは!?」


「フェンリルのマックスです。」


「それじゃお高いわ。もうちょいまけてよ。」


どうやらジェスチャーでマックスさまと価格交渉を始めたようだ。


「わ、分かったから。今度私の手作りクッキーノンシュガーもってくるから! それで良いでしょ!?」


それは何ともマックスさまが羨ましい。い、いや。おれも食べたいなんて思ってない。断じてない。


「ありがとう。マックス大好き♪」


優しくハグをするミスリーさん。あら。やだ。


くるりと振り向き、満面の笑みを浮かべていた。


「交渉成立です! 少し遠出しましょうか!」


どうやらちゃっかりした一面もあるらしい。


おれたち一行は大きなフェンリルさんのたてがみに捕まりしっかりと乗せてもらい、街を抜け、草原を駆け抜けた。


まるで風になったようだった。おれの腰にぎゅっと捕まっているミスリーさんは何とも嬉しそうな笑顔で楽しんでいた。


「ミスリーさん、これ最高ですね!」

「そうなの! マックスは私いつも指名しているんです! 彼は最高のスプリンターなのですから♪」


「ひゅう~! 気持ちいい! 風で舞った落ち葉が止まって見えます! なんて速さだ!」

「シンさま楽しんでもらっているようで何よりです!」


「ミスリーさん、ありがとう!」

「私も良い機会だったので、こちらこそです!」


ヒュオオオオオと切り裂く風に負けない元気さで、おれたち2人ははしゃぎまわっていた。


これが異世界だ。おれの背には絶世の美女のエルフさまがいて。最高の走りを魅せてくれる巨大狼のフェンリルがいて。


空気はどこまでも澄み渡っていた。










読んでくれてありがとです♪

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