10話
久しぶりの更新です!
今日はミスリーさんと一緒に町の花屋に来ている。
異世界の花屋はあるのだ。
ふんふんふふーんとミスリーさんの鼻歌が響く・・・。
可愛いね。のんびりしているエルフ族は。思わずホッコリしてしまう。
「ち、違いますからね!? やめてください。何ですかその生温かい眼差しは!?」
「大丈夫。全て分かっています。」
「だから・・・。」
「ところでその花はなんていう花ですか?」
「これはですね。チョットダケハッテン王国原産のキバッテン草の大変貴重な花なんですよ! でも価値が凄い高いわけではなくてですね! この時期にしか手に入らないというか。この花をハーブティーみたいにも出来ますし、フラワーオブジェにしても大変見栄えが良くなりますし、ですからドライフラワーとかにしても・・・。」
彼女はさも楽しそうにペレペラ喋ってくれている。おれには内容が残念ながらほどんど分からない。
「エルフのお嬢さん。となりは彼氏さんかえ。どうじゃ? お主自身のモチーフの花を贈ってもらはなくても良いのか?」
「え!? モチーフってなんの事ですか。」
「おや。お前さん知らないかえ。エルフ族は子が生まれたら庭にその子にあった植物を植えるのだえ。女の子には花、男の子には樹を植える事が多いんだえ。そこのエルフのお嬢さんのモチーフは何だえ?」
「私実はモチーフの花がないんです。」
「何じゃと!? あ、いや。すまぬ。そうかお前さん例の世代か・・・。」
「はい・・・。」
何より深刻な雰囲気である。
おれだけ置いてきぼりは寂しいぜミスリーさん。だがどうやら今ここで話してくれる雰囲気ではなさそうだ。
ミスリーさんは少し寂しそうな顔をしていたので、おれはそっと彼女の手をとった。
「じゃあ、シンさん私のモチーフの花を選んでくれませんか。」
「え、おれが決めてもいいんですか?」
「ええ。」
そう言って彼女ははにかむような笑顔を浮かべて来た。
彼女のほっぺに可愛いらしいえくぼが広がる。
そっと店の外の段々に詰まれたり壁にかかっている花にも目を通す。
「頭の中に一番目に思いついた花はどれですか? さあ答えて下さい!」
ミスリーさんがさらに笑顔になり目を輝かせて見せる。
ぐぬぬ。なかなかのプレッシャーである。
タグに付いている花言葉・・・。なかなかに素敵なフレーズばかりが並んでいる。
取り敢えずミスリーさんの金髪に花の髪飾りで似合う花にする事にした。
何とか3つの候補をそろえてさらに熟考する。
【ハイビスカス:「繊細な美しさ」「あなたを信じる」「信頼」】
【胡蝶蘭: 「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」】
【カモミール(カツミレ):「逆境に耐える」「苦難の中の力」】
花びらの大きさならハイビスカスが良いだろう。美しく大きな花弁。立体的な躍動感あるフォルム!
数を重ねれば胡蝶蘭もありである。かぐわしい香り、高貴でかつ落ち着いた雰囲気がある。おれの一押しの花であるからこそ大変惑わせて来る。
しかし最後の伏兵カモミール。これはあれだ。りんごの香りだ。しかし花は小ぶりで髪飾りなどには向いていなさそうに一見思えるが・・・。
花言葉も決してオシャレではない。
おれの前世のイメージであったエルフは儚げな美女というのを間違いだと教えてくれたミスリーさん。
彼女は快活でそれでいて芯が強い女性に思えた。
「これに決めました。カモミール。あなたは強い女性ですから。」
「フフフッ。ありがとう。シンさん。私実は何をもらっても嬉しかったのですが、シンさんが私のことを真剣に見てくれていたようでとっても嬉しいです。」
「決まったようじゃな。店頭の花をそのまま売るのも味気がないねえ。そうじゃお前さんたちまだ時間は少しあるかえ? 良かったら花畑から積み立てを上げたいものじゃが。なんせ、エルフの嬢ちゃんのモチーフの花を私の花屋で選んでくれたなんてよっぽど名誉なことじゃからのう。」
「いえいえ。そんな。私こそ大変お世話になりました。お時間でしたらまだ大丈夫です。」
「まあそう言うな。これマル坊や! お駄賃あげるから店番頼まれてくれないかえ?」
「何だいばあちゃん。今日はいつもより多いね! 良いことあったんだ!? はいよ! 行ってらっしゃい!」
「では頼んだぞい。お2人は手首にこのミサンガを巻くのじゃ。」
おれたち2人は言われたまま手首に巻いた。突如花屋のおばさまが呪文を唱えおれたち3人は爽やかな風が突き抜ける丘の上のキレイに整備されたお花畑に瞬間移動していた。
見渡す限りこの世にある美しい花が全て積み込まれていのではないだろうか。
かなり大規模でまるで花のユートピアである。
「ここ全てがあなたのもの何ですか?」
「その通りさ。まあ。手入れは大変だがねえ。私も昔は王宮魔術師の端くれでねえ。魔法をつかって花たちの世話そしているってわけさ。」
「ちょうどあの一角がカモミール畑さね。エルフのお嬢さんは好きにしていてくれ。君も花が好きなんだろう?」
「はい! 私も大好きなんです! ありがたく見学させて頂きます。この花は、ええ凄い。これ育てるの凄く難易度高いんですよ!? 一体どうやって!? 気温、地質、魔法陣の種類、ええとこれは確かええと。」
「フフッ。ではごゆっくり。君は向こう私が教えてあげるから彼女に渡す分を調達しに行くのじゃ。」
「はい。ではよろしくお願いします!」
連れられて行って5分後・・・。おれは泣きそうだった。
「だから違うのじゃ。そうじゃないったら。お前さん不器用じゃのう。そうそうそれじゃ右につまんでそこを結んで・・・。そうそういい感じなのじゃ。慣れてきおったな!?」
何とかリーさんのサイズにあった花冠を作る事ができた。
いろいろ失敗してお花が悲惨になってしまったものの、作り直しをさせて頂けたので、形は何とか及第点といったところだろうか。
「では合図を送ろうかの。」
おばばが手を上にあげ、魔法で上空に青い照明弾を放った。
それからふわりと風がおばばとおれを一番最初の地点へと運んでいった。前方からリーさんが飛んで来るのが見える。
スチャリと着地したリーさんは少し恥ずかし気に首を傾げたり足をぶらつかせたりしながらもじもじとしていた。頬も僅かに紅潮している。
「あの。これをリーさんに受け取って欲しい。」
そう言っておれは後ろに隠していた花冠をそっと彼女の頭にかぶらせ、カモミールがたくさん詰まった花籠を彼女に手渡した。
「ありがとう! ねえ、シンさん。私似合ってます?」
そう言って彼女はクルリと回って見せた。
彼女のプラチナブランドに白い花、そして黄色のおしべはとても似合っていて、まさに妖精だった。そしてその可愛くて小さな顔の端がら可愛いらしい尖った耳が存在感を放っている。
「ほら。見惚れてないで褒めてやんな。」
おばばにせかされる。
「あまりの美しさに思わず天国に来てしまったかと思ったよ。」
おれは正直すぎる感想をもらしてしまった。
やらかした。おばばと別れた後もおれたちは宿屋まで歩く道のりもお互いに恥ずかしさで死にしそうになっていた。
「何があったか報告求む」とネメシス。
【恋愛イベントが終了したと推測】と補助機。
2機の機械に興味深そうに観測されてしまうのだった。
ミスリーさんはリーさん(愛称)
読んでくれてありがとう♪




