1話
エルフはお好きでしょうか。私は大好きです♪ みんな好きですよね!? そんなみんなに届けたいなあと思ってできた作品です。
辺境の地ストロング村。私はここで生まれ育ちました。はい。エルフの3人姉妹の末っ子です。みんな私に甘いのがコンプレックスです。
ところでここは自然が綺麗で空気も澄んでいて、魔力も多く漂っている聖なる地です。まあ控えめに言っても世界一の住み心地だと自負しております。
でもでも、私はこの村を出たい。
私はもっと広い世界を見に行って、素敵な出会いをしたい。
どこかに素敵な殿方が落ちてたり、空から降って来たりしないかな。
そんな妄想ばかりの毎日です。こんな妄想癖のある女引きますよね。
お姉ちゃんたちはすぐに恋人出来たりするのに、私あんまりモテないから・・・。恥ずかしがりやなのが原因だって思いたい。(涙)
ベットからノソリと起き、両足を交互に揺らした。ぶらんぶらーん。
ううう。別に特に太っているわけでもないけど、ちょっとだけ朝ごはん減らして、ダイエットしてみようと本日も思います。
今日もエルフの里の集会への魔道具の作成。納品量たくさんあるし、もう造りだくないです。(ズビビッツ)
やだ。やだ~。こんな生活やってらんないです。誰か私をここから連れ出して! 一人で出ていくのもありかなって思ってます。ちょっとだけ枕を殴ったのは内緒です。
でも父さまや母さまには心配かけたくないの。せめて誰か頼れる人が側にいるって思っていて欲しいといいますか。
朝またちょっと寝坊しちゃいました。井戸の水くみに行こうと思います。魔力もたっぷり含んでいる時間帯ですし。
朝汲むお水はマイルドな魔素を含んでいるのです。早く起きて顔洗ってよ私。
朝身体だるい・・・。ちょっと寒いよお。(ズビビッ)
上着をはおり身だしなみを整え屋外に出ることにします。ウンン~と背を伸ばす。凝っていたのかパキパキなっていた。
何事も無く、今日もまた変わらぬ一日が始まろうとしていました。
*****
見渡す限りの新緑。聞いたことのない珍しい声の小鳥が鳴いている。
どこだ? ここは・・・。歩いて来た砂利道をふりかえる。
だが、見渡す限りの緑。
心臓が徐々に高鳴ってくる。これは異世界転移ってやつに違いない。
「納得できるかバカヤロー! おれだって多少なりとも日々積み立ててきたものがあったんだ! それを一瞬で失うなんて! ふざけるな~! あ、あんまりだ。くそう。」
人間30年。責任もあれば不安だってある。あまりの怒りに握り締めた拳が赤く震えた。
毎日たいした贅沢もせずにいたので、貯金だってそこそこ貯まっていたんだ。
企業に入社してから、けっして穏やかではない人間関係もこなし、今までおれはよくやってきた。
誰にも認められない。普通に社会人として生きること。それがどれだけ大変か。
物語のように0からやり直せるのがどれだけ羨ましいか。
失う勇気もないおれには異世界転移だなんて荷が重すぎた。
思い切り地に拳を打ち付ける。
なんで何もかも上手くいかないんだ。
帰してくれ。頼む。おれに。元の日常を。
誰にも見られることもなかったのが唯一の救いである。そう思えるのはおれの根っこがまだポジティブ思考だからかもしれない。
そっと頬の涙をハンカチでふき取った。
*****
数時間、おれは森の仲を歩き続けた。幸い、この年にしては体力はある方だ。
だが先が見えない。動植物も何もかも分からないことだらけではあったが、おれは周囲に目配せしながら、当てもなく歩き続けた。
生態系が変わっているにせよ、水鳥くらいはいるだろうと、鳥が空をとんでいるのを見るたびに観察そしていたが、どうやらそういう事もなく、身体から水分が蒸発していくのを感じる。
まずい。水を急いで確保せねば。外気温が高くないとはいえ、非常に危険である。
何日歩き続けただろうか。景色は映り変わりようやく人里らしきものが視界に入ったとたん気が緩んだのか、おれは文字通り行き倒れた。
*****
ふんふんふふーん。今日も空は青いです。快晴です。朝シチュー日和です。まだ余韻が残ってます。美味しかったなあ~。
いつもテンション高いのは私の欠点かもしれません。
見慣れた道のりを軽やかに歩き続けて行くと、人が落ちてました。
「どどどどうしましょう。人が落ちてたら拾ちゃっていいもの何でしょうか。そうです。そうですよ!?死んでしまうかもしれません。とりあえず、浮遊魔法で連れて帰りましょう!」
ドアを開けてまだ出勤前だった家族を集合させた。
「どうしよう。お母さん。娘が男を拾って来た。これはあれなのか? 責任取らせた方が良いか? 娘をもらってもらうとか?」
「まあ。いやだわ。お父さん。それにしても良い男ね。母さん久しぶりに人間見たわ。介抱してあげないとね。」
姉二人は珍獣を見るような目で両親と私を見ていた。
「ち、違う。私はそんなつもりは・・・。」しどろもどろになりながらも否定した。顔がちょっとほてっているのを感じる。
「ヤダねえ。冗談よ。」
「ハハハ・・・。すまん悪ノリしすぎた!」
う、なんだろう。物凄くウザい・・・。こんな中年にはなりたくないもんである。
性格はこんなんだが、村一番の回復術師である母の手によって男は施しを受けた。
「これと言ってはなんだが・・・。どっかに捨て置くのも可哀想だ。客室にでも眠らせておこうか。」
「ええ。家でこんな得体もしれない人間置くのはちょっと。」
すかさず姉その1が反対した。
「大丈夫ですよ。人間なんて魔力の乏しい赤子当然ですもの。」
フフフ~と母さまが余裕の笑みを浮かべる。
「とりあえず、誰か介抱しておいてくれないかな。これは村長である私の義務なのだが。どうしても今日は外せない会議があってな。」
「私は嫌よ。」
「私もパス!」
姉二人にウインクをパチパチされ、渋々私がする事に決まった。
「まあ。悪いわね。それではリーお願いね!」
「頼んだぞ。リー。」
皆が慌ただしく出ていき、戸は静かにしまった。
客室に見知らぬ男と2人。ちょっと不安であるが、問題ないのです!
攻撃魔法は得意なので、もし変な事してきましたらこの客室もろとも塵芥へと変えてしまいますよ。
フンスとばかりにガッツを決める。
今日は急遽お仕事が休みになったのです。
それはきっと良い事で・・・。なんだが眠くなってきましたが、最近買い置きしておいた小説でも読んでましょう。
客室に自分の部屋から椅子を持って来て小説を片手に気を休める。
物語の中の主人公はいつも自由で・・・。刺激に溢れる体験を何度も経験し、素敵な恋もする。
その始まりはいつだって勇気のある一歩である。
私ももしかしてこの方と・・・。あうう。また変な事を考えてしまってますよ私。
本当にごめんなさい。旅のお方。大丈夫です。何も変な事しませんから。
そうです。本に集中する事にします。
むむむなるほど。そんな事が。いやどうしてそうなるの。なんて悲しい恋・・・。(ズビビッ)
おっといけませんね。すっかり夢中になってしまいました。
おやおや。掛け布団がもぞもぞしているようですね。これはそろそろ起きそうですね。
私は気高きエルフ族。舐められるわけにはいきません。
「人間、ここはこの村の村長の宅です。かなり疲労困憊していたので誠に勝手ながら保護させて貰いました。」
「ここは・・・。そう、ですか。助けて下さりありがとうございます。」
「良いです。ですが何かこの村に用事でも?」
「実は森に遭難してしまいまして。あなたは命の恩人です。失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。私はシンと申します。」
挨拶をするべく自らの身体に鞭打って立ち上がろうとする彼を手で制す。
「はい、そうですか。ゆっくりして行ってください。私は村長の娘のミスリーです。また何か・・・。いいえ、何でもないです。用事が出来ましたら私に頼って下さいね。この村にいる間は不便はさせませんから。」
危ないです。思わず素が出ちゃうところでした。村長の娘ムーブを頑張らなくては!
余裕の笑みを浮かべ、気を遣わせないように席を外した。
「ありがとうございます。何から何まで。」
「何てきれいな人だ・・・。(ボソリ)」
ピヒャッ。きれい!? 私の事かな? ええ。照れるな~。困るな~!
少し動揺しながらも表情は一切崩さずに部屋を後にした。音も無くドアは閉められた。
どんなヒロインが良いかなあと思ったそんな日が私にもありました。
しかし、エルフをヒロインに決めた瞬間、どんどん筆が止まらなくなっちゃった次第です。
今回作者ちょっと頑張ろうと思いまして、20万字くらいの長編に挑戦しようかと!
もし良かったら、☆マークといいね♪ 後ブクマで応援お願いします! そうして下さると作者エルフって可愛いなあってもっと思って頂けるよう頑張れます!