小学生の義理の妹がランドセルを背負ったまま俺をオトそうとしてきて困ってます
「なろうラジオ大賞4」応募作品です。
現代恋愛。ラブコメ、かな。
「あっくん。今日からあっくんの妹になったカエデです。はじめまして。よろしくお願いします」
「……いや、はじめましてではないでしょ」
ある日突然、親父が再婚すると言い出した。
それこそ、その辺に買い物に行ってくると言うかのような気安さで。
で、あれよあれよと話が進み、あっという間にあちらの母娘と一緒に暮らすことに。
んで、その初日に親父たちは新婚旅行に行ってくると言って出ていった。
中学2年になったばかりの俺に小学5年生の女の子を託して。
「ふふふ、そうだっけ?」
で、玄関に立つ俺の前で年に似合わぬイタズラな笑みを浮かべているのがその子、カエデ。
てか、この母娘とは昔からお隣同士。
カエデは幼い頃から一緒に遊んでいた幼馴染みだ。
それが巡りめぐって今は俺の妹だという。
「でもでも、妹としては改めて初めましてでしょ?」
「っ!」
近い。
なぜそんなに顔を近づける。
長いまつげの、大きなキラキラした瞳が俺をまっすぐに見つめる。
こいつは昔から小綺麗な顔をしてたけど、しばらく会わないうちに大人びてきた気がする。
小学生だった間は一緒に登下校したり遊んだりもしたけど、中学に上がってからは登下校の時間も生活のリズムも変わってほとんど会うことがなくなった。
たまに道で見かけても声をかけることの方が珍しいぐらいだった。
「……あっくん。中学に行ってからなかなかカエデと遊んでくれなくて寂しかったんだー」
カエデが少しうつむき加減にそんなことを言い出した。背中の赤いランドセルが懐かしい。
「そ、そうなのか?」
「そうだったら嬉しい?」
「なっ! そ、そんなことない! ぞ!」
きゅ、急に顔を上げて上目遣いで、こいつは! こいつはまったく!
なぜかドキドキしている自分の心臓を何とかなだめる。
落ち着け。こいつは妹。こいつは妹。小学生。子供。俺は中学生。おーけー?
「ぎゅー!」
「うぎゃっぷ!」
ようやく落ち着いてきたのも束の間。カエデが急に俺に抱きついてきた。
「んなっ! 何してんだよ!」
「あっくんの匂いだー。久しぶりー」
再びはね上がる心臓。え? ドキドキしてんのバレてないよな?
「……このまま、ママたちが帰ってこなかったらどーする
?」
「……へ?」
な、にを?
「……なーんてね!」
「……は?」
カエデはパッと離れると廊下を走った。
「カエデおなかすいた! おにいちゃんご飯!」
そう言ってリビングへと消えていくカエデ。
「……チャ、チャーハンな」
先行きが不安すぎる新生活だ。