剣 —きみとの誓い―
たとえ、ゲームの中であろうと、僕は愛する者を守りたい……
剣は、私たちにとってゲームの中の武器の一つに過ぎなかった。
でもある日。
本当に戦わなくてはいけなくなった日。
私たちは現実で剣を用いて戦った。
死闘を繰り広げ生き抜く……。
そんなRPGの設定のVRゲームを、きみと僕はテレビを前にして遊んでいた。
きみと僕はゲーム好きが高じて付き合いだした恋人同士だ。
ある日、ゲームでいつも遊ぶデートの時だった。
きみがゲームのプレイヤーキャラを動かしてこう言った。
「この剣にかけて貴方を守ります」
と僕のゲームのプレイヤーキャラに跪いた。
完全におふざけだとすぐに分かったけれど、僕はそれに答えた。
「では、この剣にかけて貴女を愛すると誓います」
僕のプレイヤーのキャラが両手の剣を掲げて、それを下ろす。
きみと僕のプレイヤーキャラは、立ち上がって、
カシャン!
とお互いの剣を交差させた。
ゲームの中とはいえ、僕たちの目は真剣だった。
そして何気なく、視線を合わせると、互いに吹き出した。
「逆だよねー」
「普通男が跪くだろうに」
ひとしきり笑い終えると、静かになった。
RPGの軽快な音楽が、二人の間を流れる。
「でも」
と僕は言った。
「もし、本当に何かあったら僕はきみを愛し守り抜くからね」
冗談ではないと、真っ直ぐにきみの目を見ながら。
「うん」
ときみが頷く。
「私だって、貴方を守る立場であること忘れないでね」
きみも真剣に言い返してきた。
僕ときみが、現代において本当に誰かと剣を交えることなど、ありえないし、一生ないだろう。
けれど、こんなゲームをやっているからか、
覚悟はあった。
「じゃあ……」
と僕はきみを抱き寄せる。
お互いの誓いとして、僕たちは約束をした。
慣れないゲームの世界を精一杯表現してみました。
おかしな所満載のはずですが、作者の知識不足の故、許してください。
好きな人と携帯ゲームをしていて、この話を思い付きました。
お読み下さり、ありがとうございました。