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なんでネコ耳が……  作者: 新崎はるか
7/7

夢じゃない

気絶?それとも寝てしまっていたのか?よく分からないが、ともかくおれは目を覚ました。そこは井戸の中でも学校でもなく、目に映るのは見覚えのない天井だけ。


「……気付いたか、少年……」

魔法使いの声がする。辺りを見回すと、さっきお茶を飲んでいたテーブルがあった。おれはソファーで寝そべっているらしかった。

「えーっと、夢だった⁉︎とか……」

言いながら、それは違うと分かった。口の中が切れていて、ひどく喋りにくかったし、顔や頭が膨れ上がったような感覚もあった。

「ふふ、男の子は激しいのね」

ネコ耳フードの女性が笑う。その、まるで人ごとといった感じに、おれは少しイラッとした。

「なんの意味があるんですか、これに」

ついさっきまでの出来事の興奮からまだ覚めていないのか、つい口調が強くなる。

「あら、説明するよりもこの方が早いわ」

女性は、おれの手に自分の手を重ねた。


「ち、ちょっと、先生」

突然の事におれはうろたえる。いちいち反応してしまうのが童貞の悲しさだ。

「心の中に、自然と浮かんで来る言葉を」

どういう事だ?……ん、これか⁉︎考えが湧き上がって来るような……

「す、スパーク」


パチン!と、冬の日にドアノブを触った時のような感覚が手のひらを襲った。

「痛っ、静電気かな?」

でも今は冬じゃないし、ここは湿気のある森の中だ。

「それがあなたの魔法よ、勇者クン。ほら、魔力が私の体を通って……」

手から胸、頭へと先生の指が辿る。頭の先に達した時、フードのネコ耳がピクッと動いた。

「電気のアースみたいですね」

当然だが、誰も反応してくれなかった。


それにしても……弱すぎないか、おれの魔法。何ができるって、あのネコ耳をピクッとさせるくらいじゃないか。魔法は嬉しいけど、これじゃ……

「最初はこんなものよ」

おれの心を見透かしたように、先生が言った。


「気が付きましたか、お兄さん」

裏庭の方から、子供の声が近づいてくる。

「うわっ、痛そー」

部屋中に響く高い声。賑やかな奴だ。

「良い庭ですね。薬草がたくさん」

おお、「やくそう」!魔法と並ぶ憧れの対象!

「……嬉しそうだな、少年……」

魔法使いはそう言うと、おれのケツを掴んだ。

「……濫用はご法度……」

えっ、そういうクスリなの?


「痛いところに塗ってくださいね。そう、けっこうこってりと」

すり潰され、ペースト状になった薬草を、顔の腫れたところに塗る。

「うっ、しみる」

「……動くな少年……」

魔法使いがおれの後頭部に塗り付ける。

「痛え、くっそ!あの野郎、思いっきり殴りやがって」

「お兄さん、もうちょっとの辛抱ですよ」

子供に諭されては、黙るしかなかった。


「……なかなかイケメンだぞ……ぷっ……」

ペーストまみれのおれを見て、魔法使いが吹き出す。

「ちょっと!酷いなあ」

まあいいけど、ベトベトして気持ち悪いな。

「このままなんですか?ちょっと落ち着かなくって」

先生に聞くと、意外な言葉が返ってきた。

「いえ、このまま治します。治癒魔法で」

「治癒魔法って、先生が?」

「いえ、私じゃないわ」

じゃあ誰が?……っていうか、一人しかいないな。視線の端に、鼻息を荒くする子供の姿。

「ヒーラーです!よろしく!」

張り切る子供。大丈夫かな?

「では、始めますね!」


ヒーラーがおれの頭を包むように、手をかざす。すると、光りだして……おれは思わず声を上げた!

「おお、先生の耳が!」

ネコ耳が、ビクンビクンと動く!おれの時とはえらい違いだ!

「せ、先生の耳が!ビンビンのギンギンに!」

「わ、私の耳じゃないですし、言い方が……」

何故か、先生の顔が赤かった。








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