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なんでネコ耳が……  作者: 新崎はるか
6/7

残された最後の手段

マズイ、自分の分身に負けそうだ!能力は同じはずなのに、なんでなんだよ!

「くそっ!」

おれは地面に向かって悪態をつきながら立ち上がろうとする。ざらついた砂の感触。見上げると、分身が校舎を背に立っていた。

「決着は外でな」

校庭に、傾きつつある日の光が眩しかった。


思えば、さっきから主導権を握られて、おれは後手に回っている。そして翻弄されているおれに比べて、奴は迷いなく行動してくる。ならば、こちらから揺さぶりをかけるのはどうだ?ひとつだけ、残された手段があるんだ。


おれは立ち上がると、分身に向かって叫んだ。

「誰がお前の言うことなんか聞くか!」

言ってやった!ちょっと溜飲が下がる。

「なにを言い出すんだ。ヤケに……ん⁉︎」

分身が言い終えるのを待たず、おれは駆け出した!

「やーい、ばーかばーか!」

おれはなにふり構わず、猛烈な勢いで走った。走り方が気持ち悪い?それがどうした!

「な⁉︎お、お前は子供か?」

よし、動揺しているようだ!


自分と自分の追いかけっこ、この世で一番マヌケな光景だろう。でもいいんだ、どうせ誰も見ていないしな!

「待て、この野郎!」

分身が叫ぶ。そう言われて待つ馬鹿がいるか、この無能野郎……あっ、おれだった。


校庭を数周回ったところで、いささかへばってきた。おそらく相手も同じだろうが、おれの方が限界が近いはずだ。それを知っていて、全力で追いつこうとしてくる奴の裏をかくには……


おれは走るのをやめた。

「え、おい、ちょっと」

そこに分身が勢いよく突っ込んで来る。おれ達は揉み合うように、グラウンドの砂の上を転がった。

「痛え、急に止まりやがって」

仰向けに倒れた分身が、空に向かって憎まれ口を叩く。

「うるせえ、さっきはよくもやってくれたな!」

おれは急いで起き上がる。おれも奴も、丸腰になっていた。


おれ達は素手で殴り合った。そもそもそういうことに慣れていない、弱い男たちの喧嘩。どちらも決め手が無く、落とし所もよくわからないため、それはダラダラと続いた。

「まいったか、この野郎!」

「なんだと、この!」

どちらが発したのかもわからなくなっていく言葉。口の中は血の味、鉄のような味で一杯だった。やがて夕陽が二人を赤く染め上げる頃、どちらからともなく、ほぼ同時に、地面に倒れ込んだ。






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