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なんでネコ耳が……  作者: 新崎はるか
4/7

深層へ

「先生」に従って行くと、裏庭へと出た。小さな花壇や野菜の畑などがある中で、一際目を引いたのは、ぽっかりと口を開けた三つの井戸だった。


「それで、魔力の開発というのは、どういう……」

意味ありげな三つの井戸が、おれを不安にさせる。

「ふふ、少年、左の井戸の中を覗き込んで貰えるかしら」

先生が言う。井戸の中?何だろう?

「えーっと、この井戸ですね」

「ふふ、何が見えるかしら?」

井戸の中はただただ暗く、底も見えない。

「何も見えません」

「ほらもっと、グイッと奥まで」

先生がおれの背中に体を押し付ける。あ、当たってます、先生……いや、それどころじゃない⁉︎

「ちょ、あまり押すと……」

不意に視界が上下反転し、おれは頭から井戸に落ちた。奈落の底へと真っ逆さまに、どこまでも……やがて意識が遠のいてゆくのが、ゆっくりと感じられた。




どれくらい眠っていたのか?グッと両腕を伸ばして眠気を払う。けっこう落ちたはずだが、どうやら無傷で済んだようだ。だが一体、ここは……⁉︎


井戸の底と思われるその空間は、木の根っこやツタが絡まってできた、巨大なカゴのようで、地中深いはずなのに妙に明るいのが不思議な感じだった。

「目覚めましたか、少年」

空間に柔らかく響く女性の声。少し遠く歪んだ感じがするが、先生の声で間違いないだろう。

「はい、……先生、これはどういう」

「あなたの魔力を開発するために、戦ってもらう相手がいます。顔を上げるのです」

おれのいる場所から数メートル離れたところに、剣を構えた人影が見えた。

「一体誰ですか」

「あなたのよーく知ってる人ですよ、ふふっ」

笑い声が、おれの緊張をさらに煽る。誰だろう?


一歩、二歩、おれは腰に下げた魔法剣に手をやりながら、ジリジリと近づく。くそっ、まさか戦うハメになるとは。それも一人で……ヤバい、おれは全然強くないぞ!

「えーっと、どうしても戦わないと、ダメですか?」

「魔力が欲しくないのですか?」

正直、ノリというか勢いというか、結構軽い気持ちだったから、本気を問われると痛い。でも、魔法を使いたいというのは嘘じゃない。

「簡単にはいかないものですね」

「おっ、やる気になりましたね」

ええい、ノリと勢い上等だ!さあ、おれの相手はどんな顔をしている?

「あれっ、えっ」

確かに見覚えのある顔。風呂とか洗面所でよく見る……

「お、おれ⁉︎」

「ふふ、驚いたようですね。それはあなたの心の中で、魔力の発動を阻止しているものを、実体化したもの」

「は、はあ」

理屈はよく分からないが、この分身みたいなやつを倒せばいいんだな。

「さあ、自分に打ち勝つのです、少年!」

「は、ハイ!」

気がつけば、敵はもう近くだった。飛びかかれば届く距離。

「南無三!」

おれは勢いよく剣を抜いた。





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