なんでネコ耳が?
深い森の奥に、その家はあった。木造の建物は、木々の中に隠れこむようで、それと知らなければ通り過ぎてしまいそうなほどだった。
「ここに魔力の先生がいるんですね」
おれの言葉に、魔法使いはそっとうなずいた。
「……正確には、『導師』、魔術の上級職……」
おお、なんかすごいぞ!きっと立派で、威厳があって……
「ボクはどうすれば」
子供が不安げな表情を浮かべる。
「……用事が済むまで待ってて。街まで送るから……」
魔法使いは子供の頭をそっと撫でた。
「すみません」
玄関らしきドアを叩いてみるが、返事がない。
「……まあいい、入ろう。カギは無いはずだ……」
「知ってるんですね」
「……まあな……」
魔法使いはドアを開けると、ズカズカと無遠慮に入っていく。
「ちょ、ちょっと」
焦るおれを尻目に、魔法使いは大きめの声を上げた。
「……先生、聞こえてますよね、先生……」
先生⁉︎
「あらあら、賑やかですね」
家の奥から近づいてくる声。穏やかな、大人っぽい感じがする女性の声。
「……先生、お久しぶりです……」
魔法使いが丁寧に頭を下げる。
「まあ、珍しいお客様ね」
おれも魔法使いに習って頭を下げる。「先生」はどんな感じかな?上級職というくらいだから、バリバリのキャリアウーマン的な感じとか?
「さあ、楽にしてくださいな。お茶などいかが?」
促されるままに頭を上げる。最初に目にしたのは、ネコ耳だった。
長身に、ゆるく垂れた髪。ローブを着ているのはいかにもな感じだが、頭にかぶったフードに、ネコ耳のようなものが付いている。
「えーっと、なんでネコ耳が?」
小声で魔法使いに尋ねる。
「……あれは上級職にのみ許された『獣のローブ』。魔力の弱いものは、理性を失ってしまう……」
獣のローブ、怖っ!
おれ達はテーブルを囲んで腰掛けた。温かいお茶と、少しのお菓子が並べられる。
「なるほど、この少年の魔力を開発するのね」
「先生」が言う。開発って、なんかドキドキするな。
「……ゼロを一にするのは難しいので、先生のお力を借りようと……」
魔法使いがかしこまって言う。
「さっきから気になってたんですが、先生って」
「……私の魔法の先生だ……」
「この子も始めはゼロだったのよ、うふふ」
「……開発された……」
や、やっぱりドキドキするぞ。
「それで、こちらの可愛いらしいのは、どうするかしら」
先生が、お菓子を頬張る子供に目を向けた。
「……迷子らしくて。帰りに街まで連れて行こうかと……」
魔法使いが言うと、先生は怪しげな笑みをうかべた。
「迷子、ねえ……」
なんだろう、胸がぞわぞわする。ただの子供じゃない……?
「ボクも、開発されたいです!」
な、何を言い出すんだ、この子は!
「あらあら、うふふ」
先生も満更でもない感じだ。で、開発って何を……?
「じゃあ三人とも、こちらへ」
家の奥へと向かう先生を、おれ達は追いかけた。
古のゲームで、上級職になると何故かネコ耳が付くものがあったのです。う、嘘じゃないですよ!