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なんでネコ耳が……  作者: 新崎はるか
2/7

姉さん当たってます

うっそうとした森の木々の間を、おれ達は歩いていた。足もとは草に覆われていて歩きにくい。


「どのくらいで着くのかな」

おれが問いかけると、魔法使いは笑みを浮かべた。

「……そう遠くはない。もう疲れたのか?だらしない……」

「いや、まあ、そうだけど」

「……少し休むか。急ぐ必要も……」

そう言いかけた時、魔法使いの表情が変わった。

「どうかした……うっ⁉︎」

おれの問いかけには答えず、急に体を密着させてくる。

「な、なんですか、いきなり」

腕に何か柔らかいものが当たって、おれは気が気ではなかった。それに良い匂いもするし……

「……しっ、後ろから誰かくる。みっつ数えたら左右に散るぞ……」

「えっ、誰かって」

「……とっ捕まえて聞くとしよう。さん、に、いち……」

おれ達は二手に分かれると、木の陰に身を隠した。すると、「追跡者」が慌てたように駆け寄ってくるのが見えた。

「……今だ……」

「おお!」

おれ達は左右から同時に飛びかかろうとしたが、思いとどまった。

「子供です!」

おれは叫ぶ。

「……ああ、だが油断はするな……」

魔法使いは表情を変えずに言った。

「ま、待ってください!怪しいものではないです!」

あどけない表情の子供が、カン高い声で叫ぶ。おれ達はじりじりと、左右から挟むように近づいていく。

「ただ、ちょっと……」

子供がそう言った時、不意に、腹の鳴る音がした。


「は、恥ずかしい……」

おれの元いた世界なら、小学生か中学生か、とにかくおれより少し年下だと思われるような子供が、真っ赤な顔で呟く。

「……お腹が空いていたのか……」

魔法使いは表情を緩めると、普段よりも優しい口調で言った。

「はい、それで、よろしかったら……図々しいとは思うのですが……」

高く透き通るような声。中性的な見た目も相まって、性別が分からない。

「……ちょうど休憩するところだったんだ。食べ物も、少しなら……」

魔法使いがそう言うと、子供の目が、車のヘッドライトのように輝くのが見て取れた。


「迷子になったって?」

おれは、食べ物に夢中な子供に問いかけた。

「ハイ、実は人を探していたのですが」

食べ物を飲み込んでから、落ち着いた口調で答える。

「森に迷い込んでしまって」

その割には平気な感じがする。おっとりとした性格なのか?

「おれ達はこれから用事があるんだが」

「ボクも一緒に行っていいですか?」

「なっ⁉︎遊びじゃない……」

言いかけたおれを真っ直ぐに見つめる、大きな目。くそっ、そんな目で見るな!

「……まあ、良いだろう。一人で帰すわけにもいくまい……」

魔法使いはそう言って微笑んだ。

「な、なんか優しいですね、魔法使い」

おれがそう言うと、不意にケツを掴まれる感触がした。

「……私はいつも優しい……あと、お姉ちゃんと呼べ……」

「痛い痛い、ね、姉さん!」

「……よろしい……」

傍で、子供がクスクスと笑っていた。













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