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グッジョブ・ブレイバー  作者: 語屋アヤ
第一章 勇者は夕闇<ハザマ>に覚悟する
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第7話『ボクっ娘勇者と欠陥品』

 レポーターである俺の一言を最後に、録画は終了した。


 場所は王城にある会議室。光の魔石を介してスマホ録画の映像が投映されていたのだ。


 大体三十センチ四方の黒い箱で、半分位が収納スペースになっており、側面にはレンズとして光の魔石が埋め込まれている。

 レンズとは反対側に位置する部分に蓋があり、そこを外してスマホをセット。するとレンズを通して拡大化された映像が写し出される。


 後は白くて平らな、ホワイトボード状の石版がスクリーンとして用意された。つまりこれはプロジェクターだ。


「素晴らしい。流石は勇者殿だ」


 上映会が終了すると、王様が満足気に頷き拍手を始め、他の大臣達もそれに続く。映画かな?


「あー、いやあ、その……」


 所在なさげに困った笑顔をするばかりのあかりに、次々と賛辞が飛ぶ。


「兵士達が苦戦したゴブリンを圧倒しておりましたぞ!」


「それどころかキングゴブリンすら一撃で倒してしまうとは!」


「まさしく伝説に違わぬお力!」


 この勇者様初出撃を讃える会に参加させられたのは、撮影機材のスマホが俺の私物だからに他ならない。


 勇者あかりのスマホは、この世界に来る前に破損していて起動すらしなかった。

 故に俺も戦闘の現場に同行させられ、こそこそと映像を撮影する係になったのだ。他人にスマホ渡すとか、まかり間違って秘蔵のエロ動画消されたらどうすんだよ!


 安全確保のため専属魔導師が付き添い、魔物避けと隠蔽の魔法を重ねがけし続けてくれていた。動きを最小限にして撮影しているだけなら、低級な魔物にはまず見つからないガチガチのハーミットスタイル。あかりと兵士達の同時撮影時はズーム機能を駆使して対応した。

 そしてご褒美として、俺の膝上には感情のない表情と死んだ目をしたセシルたんが座っている。もう、緊張しちゃって。上映中ずっとここにいたのに!


 これも勇者の依頼報告会なのだが、結局終始あかり様を讃える会で終わった。

 皆が部屋から出ていくのを俺は黙って見送る。少しでもセシルたんのぬくもりを堪能するため、俺は! 最後まで! 退室せんぞ!


「あの拓馬さん。改めて動画の撮影ありがとうございました!」


 断固として席を立たない俺の前に、件の勇者様が来訪した。


 今回のクエストに同行したように、俺とあかりの間に面識はある。

 だが基本的に扱いは天地の差があるため、これまで会話はほんの数言程度だった。


「気にするな。こっちもそれに見合う報酬は手に入れた。セシルたんと言う至宝をなあ!」


「え、あ、うん……」


 普通に引かれているが、それくらいで俺が態度を改めると思うなよ。


「それでなんだい、勇者様?」


「これまで何度か顔は合わせてたけど、ちゃんとした挨拶はできてなかったから。知ってるだろうけど、ボクは呉乃あかりです。よろしくね」


「暁拓馬。そしてこっちは幼妻のセシルたん」


「婚姻は報酬に含まれてません」


 サービス精神に欠けるなあ。大好きなお兄ちゃんの前だとツンデレになっちゃうようだ。


「セシルちゃんの言ってた通り変わった人なんだね」


「はい、とても」


 そこはやけにしっかりした強い口調でお答えされた。ふふんラブラブ現場を見られて照れちゃっているな! 可愛いなあもう。


「拓馬さんのファッションって探偵さんみたいで格好いいね。実はずっと気になってたんだ」


「みたいというか元の世界じゃ探偵だよ。バイトだけどな」


 この世界に来てからは仕事のためもっぱら執事服を着てるが、今日はフリーなので私服だ。


「そうなんだ! ボク、本物の探偵さんって初めて見たよ」


 まあ、そりゃあ普通探偵って、仕事中に自分の職業オープンにしないからなあ。


「やっぱり洞察力とかすごいんだよね?」


「俺は名の付かない時給探偵だよ。変な期待をされても困るが、まあ職業柄の適正ってものはあるさ」


「それなら今日の戦闘、拓馬さんから見てどう思ったかな?」


 親睦を深めたいって言葉に嘘はなさそうだけど、こっちが本題なのだろうな。


「そんなの」


 セシルたんを撫でる。ナデコ。

 ナデナデナデコ。


「決まってるだろ」


 ナデナデコ。ナデナデナデコ。


「お前が」


 ナデコナデコ。


「うんちょっと待って。先にセシルちゃんを開放してあげて」


 開放ってなんだよ。全力で愛でているだけだよ!


「おかまいなく。心を虚無にしておりますから」


「構うよ!」


「だそうですので、話をするか撫でるかどちらかにしてください」


「じゃあ撫でる!」


「下りますね」


「選択肢がない!」


 仕方ないので虚無幼女を抱っこのみで会話する方向に切り替える。


「感想だっけ? ド新人のド素人戦闘」


 ハッキリとストレートに俺は端的な感想を告げた。


「わかってるだろ。お前への評価は全部アーマードジョブへの賛辞だ」


 その理由は、もはや語るまでもなく明らかだ。


「まあ、あそこまで露骨に性能頼りな戦いならねー。皆の良いところを探して褒めてる感パないですわー!」


 素人がとりあえず変身して魔物達を力押しでなんとかしました。というだけ。


「勇者様になんてことを言うか、この欠陥品(フォルティ)め……!」


 まだ残っていた貴族達が、会話を聞いて俺達の元へとやってきた。俺は欠陥品呼ばわりも無視して続ける。


「お前はただ召喚者として変身する資格を有しているが、それだけ。王道ロボットアニメの第一話みたいに操れちゃう才能は持っていなかったってことさ」


 言ってる俺はその変身すら失敗したけどな!


「だよねー。よかったぁ。ボクがおかしいわけじゃなかった」


 あかりは怒ったり悲しんだりの様子はまるで見せず、むしろ安堵したように胸をなでおろした。


「それより、欠陥品(フォルティ)とはどういう意味ですか?」


 自分の悪口はスルーした娘は、俺へ向けられた蔑称には貴族達を鋭く睨み付けて反応した。


「え、それは……」


「拓馬さんもボクと同じく召喚されて、今回だって危険な中で撮影協力してくれたんですよ! それを欠陥品だなんて、言っていいことと悪いことがあります!」


「は、はい、申し訳ございませんでした」


「謝るのはボクにじゃないでしょう」


「いいさ、勇者様。いきなよ、この騒ぎが王様の耳に入ったら、おまんまの食い上げだものね?」


「ぐっ……!」


 顔をしかめた貴族達はそそくさとその場を去っていった。残った勇者様は納得してなさそうだ。


「良かったの? せめてごめんなさいくらいは……」


「タクマさん。今日までにお仕事サボって逃げだしたのは何度ですか?」


「十三回」


「お皿を割った枚数は」


「数えも切れず」


「そういうことです」


「えぇー……」


 勇者あかりはドン引きした。


「ククク……間違って召喚した負い目があるからなぁ、多少のサボりとミスは大目に見てくれる!」


 フハハハ、俺のサボりは強権が背後にあるので成立しているのだ!


「最近は監視が強くなって真面目になってきましたが、基本的に駄目な人なのです」


「ちゃんとお仕事しようね」


 幼女に色々チクられて勇者からの評価がダダ下がりした。


「そもそもタクマさんは言い過ぎです」


 いいですか、と幼女兼保護者は続ける。


「アカリ様はまだ訓練を始めたばかりなのですから、上手く戦えないのは当然です。あくまで今回は慣れることが目的。

 むしろキングゴブリンを倒した疾走は良い発想だったと思います。通常のゴブリンは追いつけず、仮に攻撃できたとしても通じませんから、振り切ってリーダーを狙い撃ちにしておられました」


 見事な解説が炸裂した。もはや俺とセシルたん、どちらが子供かわからないね!


「決して乏しめるべき戦果ではありません」


「さっすがセシルたん。高性能ロリ!」


 俺はやることがないので花丸を上げる意味でセシルたんを撫でてセクハラ……もとい褒めておく。


「ありがとうセシルちゃん」


 見事なフォローであかりは持ち直した。結果として俺は幼女の踏み台となったわけだが、ロリおみ足でフミフミとかご褒美じゃないですかヤッター!

 

「でも、拓馬さんの指摘でちょっと安心したのも本当」


「安心、ですか?」


「うん。ダメなところをちゃんとダメって言ってくれる人がいる。感覚的にズレてないってことも教えてくれた」


 ボクっ娘勇者は朗らかな笑みを向けて、俺に握手を求める。


「ここまでちゃんとご挨拶できてなかったから。同じ地球出身同士だし、これからよろしくね拓馬さん」


 俺は出された手とあかりにを何度か交互に見てから、


「すまぬな、俺の腕は幼女を(いだ)くか撫でるためにあるのだ」


「あ、うん……」


 有無を言わさずセシルたんが降りてしまったので、俺は死んだ魚のような目をした勇者とおざなりな握手を交わしたのだった。


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