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グッジョブ・ブレイバー  作者: 下駄
第二章 異端≪エルフ≫は救済者の夢を見ない(事件編)
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第39話『ロリメイド達の親愛』

 リィスが去った後、微妙な空気感の中に俺とメイド姉妹が取り残されていた。

 恐らく今屋敷の中で最も忙しい娘達と、一番好き勝手している野郎である。


 そして先に状況を打破を試みたのはメイド姉妹達だった。


「それでは、わたし達もまだやるべきことが残っておりますので。お尻好きのタクマさま」


「今日はもうそこにいても獲物……もといお客様は来ないと思うわ。ロリコンのタクマさま」


「変態扱いしつつ捨て置かないで!」


 さっさと去ろうとする二人を呼び止めた。

 今回の事件、容疑者達の中で一番忙しくて捕まえにくいのが彼女達だ。

 ここで会えたのは僥倖と言えるので、離すわけにはいかない。


「三つ、教えてほしいことがあるんだ」


「何でしょうか?」


「できるだけ手短にしてほしいわ」


 彼女達は俺とリアノンのいざこざはまだ知らない可能性がある。だったら質問自体はなし崩しでいい。問題はその後だった。


「一つ、君達の事件発生までの足取りを教えてほしい。

 二つ、廊下に繋がる部屋と二階を繋いでいた扉の鍵は、誰が管理しているのか。

 三つ、君達とお茶会をしていた者以外で事件現場の近くにいた人は見ただろうか?」


 人差し指、中指、親指と、一本ずつ指を立てながら質問を口に出していく。

 答える義理もない質問群は、どれもクーリエが魔女であることを疑うための問いかけだった。

 裏を返せばリアノンを信用していない。

 問われる彼女達にとっては気分の良いものではないだろう。


 二人は少しの間顔を合わせて見つめ合うと、俺に背を向ける。


「歩きながらでよければお話します」


「……いいの? そんなあっさり」


「聞いておいて何を言っているのロリコンさま」


 それを言われると身も蓋もないんだがね。不思議に思いながらも彼女達に追随して歩きだす。


「せめて名前を呼んでほしいな! もしくはもっと格式高く幼女愛好家(ベジタリアン)と!」


「本気で身の危険を感じます。性犯罪者(ベジタリアン)さま」


「うん……話を戻そうか」


 この話題は、樽に入った黒ひげのオッサンに剣をグサグサ突き刺すゲームを、俺のハートでやっているくらいダメージになる。オールクリティカル。


「君達は特にリアノン様を信奉しているから、答えてもらえないかもと思ってたよ」


「ええ、信じているわ。かつて孤児だったわたし達は、日々市場で盗みを働いて食いつなぐ生活だった」


「ある日盗みに失敗して捕まったところを、リアノンさまが目を掛けて助け出してくださいました」


「ええ、リアノンさまのご厚意がなければ、わたし達あそこで死んでいたわね」


「なるほど。命の恩人……いや今を含めると人生の恩人なんだね」


 さらりと話されたがかなり重い話だった。そりゃあ信奉もしようというものだ。


「だから絶対に信じています。リアノンさまのお力を」


「リアノンさまがわたし達を見つけた時、わたし達は五歳だったわ。もちろん、今みたいに魔法も使えなかった」


「まさに君達の才能を見出したってわけか」


 パーティーの選定を任されるリアノンの真眼。これについては誰からも悪い意見が出ない。

 セシルだって真眼の力を信じて俺をここへ預けた。まさに疑うべくもない才能。


「それにリアノンさまは誰よりも領地と民を愛しています。旦那さまと奥方さまから引き継いだ、絶対に護るべき財産。そう仰っていました」


「リアノン様は確か魔女に両親の命を奪われているのだったね……」


 彼女にとって今日の悲劇は二度目なのだ。そして、一度目はリアノンにとってかけがえのない人達だった。


「わたし達は一番近くで見ていたから。リアノンさまが失意に沈み、そして再び立ち上がる姿を」


「故に魔女の正体を誤るなど、絶対にあり得ません」


「タクマさま。仮にあなたが何を調べても、それはリアノンさまの正しさを証明する手助けとなるわ。だからわたし達は知っていることを話すだけ」


「なるほど。合点がいったよ」


 誰よりも信じているから、俺みたいな不届き者が現れても動じない。

 彼女達とリアノンの間にある絆は、俺が想像していたよりもずっと強いものだった。


「まず一つ目の回答。わたし達は貴方のマッサージを受けた後、リアノンさまの元へ戻って一緒にお茶会を行うロビーへ行ったわ。そこからはお茶やお茶菓子の準備をしていた」


「二人はあれがクーリエ監視が目的だと聞いていたのかい?」


「ええ、けれど気にせずいつも通りにすればいいと命じられていたので、その通りにしていたわ」


 リアノンの証言と食い違う部分はない。少なくともリアノンのアリバイは完全に証明された。


「二人がロビーにいなかった時の行動を証明できる人は?」


「それはいません。ただでさえこの屋敷、今は少数精鋭ですから」


「リアノンさま、技量重視で人を雇うし、能力に見合った対価がモットーだからお給金良いのよ、とっても。良過ぎるくらい」


「その結果、質は良いけど人材不足が当館の抱える慢性的な問題です」


 確かに、この屋敷はパーティー候補を多数抱えている割に、メイドや使用人が少ない。

 領地経営の補佐役や芸術性など替えの利かない人材は個別に雇っているが、リアノンの真眼に適う人材はそういないらしい。


「資質が見える分、質を無視できないのだから、めんどくさい人ですよね」


「わたし達なんて一体二人何役かわからないぐらい役目を負っているし、色々と真っ黒な労働環境の改善は常に願っているわ」


「最初の信用が吹っ飛ぶ流れになってきたよ!」


 何だかブラック企業に対する愚痴大会みたいなのが始まってしまった。

 いやまあ、人間感謝の気持ちと日常的な小さなストレスって別問題として抱えているものだからね。

 実際彼女達は今回の件でも仕事に追われているし、普段からあちこち動き回りながらリアノンの世話もしている。


「信頼はしておりますよ。それはそれ、これはこれ、です」


「そういうことで、わたし達はお互い以外に潔白を証明する手段はないわ」


「ふむふむ、逆に言えば近くにいた関係者も必然減ると」


 一つ目の回答としては十分といえた。こっちとしては色々と絞り込みしやすくなってありがたくもある。


「答えやすいものからお答えします。次は三つ目、鍵はわたし達二人とリアノンさまが貸出と返却の受け取りの管理を行っています」


「ちなみに、魔法で強引に開けるとかは?」


「一般家庭ならいざ知らず、ここは一流の魔導師様もたくさんおられます。それができるのなら鍵の意味がありません」


 予想通りだけど、魔力探知機と同様に鍵は魔法対策もなされた特別製のようだ。

 そして管理はメイド達とリアノンにより行われていた。

 事件現場の部屋はアートリスが鍵を開けていたので出入り自由だったろうけど、少なくとも二階へ続く鍵は硬く閉ざされていた。


「理解したよ。ありがとう」


「最後に二つ目。わたし達はあの近くを動いていたから、あの近辺で他に誰がいたかは把握してる。事件現場近くにいた人はもう一人いるわ」


「それは誰かな?」


 俺の知らない容疑者。もしくは重要参考人となる人物がまだいた。これはかなり重要な情報だ。


「庭師のグラカニスさまです。あの方はわたし達が最初にロビーへ来た時、庭でお仕事中でした」


「そういや、あの人庭の手入れしてたんだっけ」


 リクレーションルームに向かう時も少し話をしたし、庭にいるのは何ら不自然なことではなかった。


「窓から実際に姿が見えていたから。事件時にもあの付近にいた可能性があるわ」


「なるほど、そいつは良い情報だ。ところで彼は今どこに?」


「事件後に一度お見かけしたので、念のため自室へ戻り用心していただいています」


「そんなわけで、詳細は彼自身に聞いてちょうだい。部屋はここだから」


「え?」


 なんと、俺は会話をしながら彼の部屋に案内されていたのだった。

 最初の質問時に計算してやっていたのだろう。できるお子さん達である。


「それでは、わたし達は業務に戻らせていただきます性倒錯者(ベジタリアン)さま。お尻に大人の悪戯をされる前に」


「頑張ってリアノンさまの正しさを証明してちょうだいな異常性欲者(ベジタリアン)さま。子供に手を出すより健全だわ」


「去り際までそのネタが引っ張られるとは思わなかったよ! 協力ありがとう!」


 自分達の仕事に戻っていく二人を見送って、俺は次のステージに進む。


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