第4話『勇者活動報告』
● レストラン料理長(四十五歳・男)
勇者様か? ああ、ありゃあ駄目だね。全然駄目。
配膳や洗い物させたら皿割りやがる。荷物運びさせたらサボって戻らねえ。
この間なんてよ、まだ使える火の魔石を間違って捨てたとか言いやがって……!
あのな、厨房ってのは戦場なんだよ。あんなドジばっかのガキ、いつまでもおいとけるかってんだ!
アイツが勇者として召喚されたとはなあ。まさに世も末だね。
● メイド(二十二歳・女)
勇者様と働いた感想ですか?
その、あまり手先は器用じゃないお方ですね。
何度か厨房で作業の指示をいたしました。
大抵はお掃除なのですが、洗い物をするとよくお皿を割ってしまわれます。
最近では皿を割った時、「へえ、この高さと角度ならこんな割れ方か」などと小声でブツブツ呟いておられました。
勇者様は皿割りコンテストの優勝でも狙っておられるのでしょうか?
● コック見習いの少年(十二歳・男性)
勇者様ですか。面白い人ですよね。俺、二人でジャガイモの皮むきしましたよ。
とはいえ、勇者様に雑用は不味いってなったのか、すぐ別の仕事に回されてました。
そしたら「ハハハ、すまないな少年。やはり俺は選ばし者。厨房の片隅で終わる男ではないようだ!」って、高笑いしながら案内にきたメイドさんに連れていかれてました。
そんで、次の日また一緒にジャガイモの皮むきしました。
● メイドの少女(十四歳・女性)
勇者様ですか……そのぅ……悪い人ではないと思います。ええはい、きっと。
ただ城内のお掃除をお任せすると、毎回いつの間にかいなくなっておりまして……。この前は気が付いたら姫様の愛猫とお戯れになっていました。
ええ、ええはい! きっと猫ちゃんのお食事係なら立派にこなせると思います!
● 礼拝堂のシスター(二十七歳・女性)
勇者様でございますか? それはとても素晴らしい方でございますよ。
一度礼拝堂のお手伝いに参られた時にお話しする機会がございまして、命に対してとても深い思慮をお持ちの方でした。
勇者様のお国では『生命礼賛』という教えがございまして、全ての生命に対する敬意と愛情が込められているそうです。
中でも命を育む女性と、特に幼き命を大切に扱うべきであると。
そのため、多くの男性は『ロリ婚』を尊ぶそうです。
意味はよくわからなかったのですが、きっと深遠な教示の果てに開く悟りの境地なのだと思います。
● グラドニア魔導師(三十五歳・男性)
何をやらせてもまるで駄目。
失敗するかすぐに飽きて逃げ出す。
そういう苦情ばかりが平民から押し寄せてきてます。
城内じゃあの勇者は「できるのは遊びだけの欠陥品」だと言われてますよ。
やはり、もうこの世界に女神の御加護はないのでしょう。
だから私は反対だったのですよ。あんな子供の召喚魔法にグラドニアの未来を託すなんてね。