旅立ち
この村にはある言い伝えがあった。
[あの扉の向こうに行って帰って来た者はいない][扉の向こうには違う世界がある]
今俺たちはそう言われている扉の前にいる。
小さい頃から、扉の向こうに行ってみたかった。
大きな戦は俺たちの生まれる十数年前に終わり、人々は平和に暮らしている。
ガキの頃から聞かされていたその向こうの世界に強烈に興味があった。
今日。信頼できる友が全員16歳になった。前々から決めていた、扉の向こうに、行く。
大きな巨木に読めない文字がびっしりと書かれた扉。
扉の先には。
改札口の様なものがあった。
職員らしき男の人が二つある改札口にそれぞれ立っていて、一つは俺たちと同じように扉から入ったのか話中だ。
「あのー、この先に行きたいんですけど・・・」
とりあえず、空いている隣の男に話しかける。
「んーー?あんたらもかぁ、ここはな五人一組じゃないと入れないんだよ。それか特別な許可証がないとな。」
「えっ、まじで?初耳!ていうかそういうシステムなの?」
軽くそういう係員にダンが呟く。
「・・・どうする?五人一組だろ?もう一人入れなきゃ此処通れないって・・・聞いてないよ・・・。てか戻れるの?」
扉を見ようとしたとき、隣の大声に動きが止まってしまった。
「だーかーらー!五人一組じゃないと入れないって、規則にも書いてあるし、そういってるでしょう?一人で行くにはそーれーなーりーのーー許可証がー!」
「あ、じゃあ、あんたら四人と組んでなら入れるじゃん、そうしなよ!」
「はぁ?ふざけるなよ、なんでこんな子供四人と組まないといけないんだ。入った途端やられるのが落ちだろう。」
顔まで完全に隠したその人はどうやら女の人のようだ。
・・・だがリックよりも口が悪い。
「なんだとー!だいた「だいたい、許可証ならあると言ってるだろうさっさと確認して、あけろ」
リックの言葉を遮り、机の上の紙を執拗にノックする。
「・・・通達は来てないんだぞ!本物なのか?」
「それを調べるのはお前たちの仕事だろう。問い合わせなりなんなりしたらいいじゃないか」
係員はぶつぶついいながら前をすり抜けてどこかへ行ってしまった。
いつの間にか、俺たちを担当していた人もいない。
「ふう」
女の人は、軽いため息の後改札を通る。
そして、鍵束をじゃらじゃらと動かし、あっさりと奥の大きな扉を開けて出て行った。
(いつの間に掏ったんだ・・・)
その早業に若干背筋が凍り感覚を覚える。
扉は開いたまま
俺たちは目配せし、係員がいないことを良いことに女の人の後を通り扉に向かう。
(ごめんなさい、係の人)
瞬間、世界は暗転した。