進化します
目を覚ますと俺は森の中に捨てられていた。
辺り一面、自然が生い茂っている。
木に噛み付いている草や、謎の声を発している花などが、俺にここは現実世界ではないことを教えてくれる。
俺は夢を見ているんだろうか?
夢だと思ったのは何も不思議植物だけのせいではない。
俺の寝ていたすぐ近くに俺の腰ほどまである台座、そしてその上にはひとりでに青く光っている球がおいてある。
これだけでもだいぶ森とはミスマッチだが、極め付けに台座の目の前にスマホまで落ちていた。
カバーもフィルムカバーも付いていない事から俺のスマホではないようだ。
しかし、夢にしては少々リアルすぎる。
自然の音や匂い、地面の感触まである。
『異世界転移』
という言葉が頭をよぎった。
それはさすがに俺の願望だろうとは思うが、ここまでリアルだと無視できない線であるだろう。
もしそうだとするならば、この謎球体とその手前に落ちているスマートフォンが俺に与えられた魔道具と言う名のチートかもしれない。
チートは好きではないんだけどな。
そう考えつつもまず手前にあるスマホを手に取った。
待ってみて気づいたが、これはスマホのようであってスマホではないらしい。
このスマホには音量ボタンはおろかホームボタンも電源ボタンもない。
これではただのスマホの模型だ。
と、そこまで考えたところでスマホの電源がついた。
ーダンジョンマスターを確認ー
ー起動しますー
うぉっ喋った。
ーマスターの種族を選択した下さいー
スマホが俺にそう告げると画面上に5つの種族が表示される。
・ウルフ型
攻守のバランスがよく、俊敏が高いが、代わりに魔法系統のステータスは低め。
また、同族との意思疎通能力が高く、低位の魔物であっても高度な連携が可能。
目立った弱点も無いが、これといった強みも無い、バランス型。
・ゴブリン型
全体的に低いステータスであるが、成長が早いため、早期の進化が可能。
また、繁殖力が極めて高い。
高い繁殖力と成長力を生かした早期決戦型。
・アンデッド型
魔力、MPが高く、状態異常にかなり強いが、弱点属性は多い。
また、多種多様の眷属を創造する事が可能。
創造や特性を生かした長期戦略型。
・人間型
全体的に低いステータスであるが、スキルの習得がしやすく、武器の『装備』が可能。
また、進化はできないが、代わりに|職業『ジョブ』の変更ができる。
眷属の召喚ができないため、現地の人間を活かして戦う特殊型。
・ドラゴン型
単体で極めて高い戦闘力をもつが、常に大量の食料を必要とする。
また、同族との意思疎通は難しい。
圧倒的な戦闘力を盾にゴリ押しするパワー型。
とまぁ、こんな感じで。
とりあえず、ほっぺをつねってここが夢ではなく異世界だということを確認する。
ほっぺに残るヒリヒリとした痛みが俺に現実を教えてくれる。
なぜ異世界に転移した?
死んで女神から転生させられる、どっかの世界から勇者として召喚される、輪廻転生のときに何かの間違いで前世の記憶を思い出す。
有名なのはこのくらいだが、この全てが今の状況に当てはまらない。
ここにくる前、俺は自分の部屋にいたはずだ。
そこで死んだとは考えにくい。
よって死んで転生ではなく、何かしらによって転移させられたと考えるべきだ。
そしてこのスマホ。
明らかに俺に何かゲームのようなものをさせたいように思える。
「おもしろいじゃん。」
ゲームマスターとまで呼ばれたこの俺にゲームをさせるとは、ここに俺を呼んだやつはなかなか見る目があるんじゃないか。
どうせ前の世界にいたところで、俺を必要としてる人間なんて一人もいない。
未練などこれっぽっちもない。
せいぜいこのゲームの世界を存分に楽しんでやる。
俺はこの世界に呼んだやつの掌の上で踊らされてるのを自覚しながら、スマホの画面に目をおとした。
表示されてるのは5つの種族。
中でも気になるのは、種族の説明にある短期決戦型や長期戦略型などの文字。
「これは何かと戦えということか?」
異世界で戦うと言われたら、まず最初に思い浮かぶのが魔王。
悲しいほどにゲーム脳なおれだが、俺が勇者となり魔王を倒すために転移させられた、なんて展開もありえるとは思う。
が、だとしたら眷属を創造して戦うアンデッド型を選べばむしろそいつこそ魔王っぽくないか。
それに現地の人間を使う人間型が特殊型に分類されてるのもおかしい。
恐らくだが、通常プレイでは人間とは交わらないゲームなんだろう。
では俺は邪神やら神やらと戦えばいいのだろうか?
神という存在に勝ち目なんてあるのか?
まあ、これがゲームという設定であるなら、何かしら勝利の方法があるか。
しかし、何と戦うにせよ、この世界がゲームのように作られたというのであれば俺に死角はない。
数多くのゲーム経験により、ゲームマスターとまで呼ばれた男だ。
初見プレイであっても、上級者並みのプレイヤースキルをみせ、最速で攻略していく。
それはただの種族選択でも発揮される。
「まず、状況を整えようか。
何かと戦う事になる以上、1番大切になってくるのは情報だ。
敵の強さ、弱点、攻撃パターンなどあらゆる面において情報は大切になるだろう。
よって情報の共有が難しそうなウルフ、ゴブリン、ドラゴン型は選択肢から除外しよう。
残ったのはアンデッドと人間型だが、人間は言わずもがな、情報の大切さを理解して、それを有効活用する事ができる種族である。
もちろん嘘や偽の情報も出てくるだろうが、そこは自分で精査していけばいい。
次にアンデッド型だが、アンデッド型は眷属創造、もっというなら多種多彩な眷属を創造できるというところに興味がある。
情報収集に特化した眷属も創造できのだろう。
そういった眷属を人間の住む街に潜入させたり、あるいは敵陣への偵察に使ったりと、かなり想像が膨らむ種族ではある。
が、人間だって簡単に自分たちの街に異物を入らせないだろうし、そもそも多種多彩な眷属がどういったものかもよくわからない。
これで結論がでたな。」
俺は手元のスマホで人間型を選ぶ。
本当によろしいですかの確認もなく、スマホは次の画面へと移っていく。
ーダンジョンマスター005種族を決定しましたー
ー人間への進化を開始しますー
人間への進化ってなんだよ、とそこまで考えたところで俺の意識は消えた。